復帰前年、市長時代の日記など収録

泉芳朗の日記などを収録した書籍を出版した楠田書店の楠田会長

日本復帰運動のリーダー、泉芳朗

楠田書店「泉芳朗の歩んだ道」出版 奄美復帰運動のリーダー

25日の「日本復帰記念の日」を前に、奄美市名瀬入舟町の楠田書店は、奄美群島の日本復帰運動のリーダー、泉芳朗(1905~59年)が復帰前年の旧名瀬市長時代に書いた日記などを収録した「奄美のガンジー 泉芳朗の歩んだ道」を出版した。発行者の「泉芳朗先生を偲ぶ会」の楠田哲久会長(75)は「日本政府や米軍政府とのやり取りなども記されている。来年は復帰70周年の節目の年。本を通し、芳朗先生をはじめとする当時の人たちの思いを、ぜひ多くの人に知ってほしい」と話した。同書には、日記のほか、未発表の短編小説2作品と詩58編も収録している。

泉は米軍統治下の奄美で祖国復帰を願う群島民の先頭に立ち、奄美大島復帰協議会議長を務め、署名運動や5日間の断食祈願(ハンガーストライキ)などを行った。泉の活動などが実を結び、53年12月25日、日本復帰が実現した。

日記は、泉が旧名瀬市長選に当選した9日後の52年9月16日から同11月13日に執筆された。大学ノートの表紙には、自身の名前と「牛歩」の題名が記されている。2014年ごろ、泉のおいの泉宏比古さん(64)=神奈川県=が、茨城県の実家で資料整理中に発見、内容などを調べていた。

日記には当時の住民の暮らしぶりや、名瀬市長として米軍政府高官とやり取りしたことや、沖永良部島と与論の2島を復帰対象から外す「2島分離報道」を巡るやり取りなどが記されている。9月30日には、「東京方面に対し与論永良部分離復帰説の真相を照會打電」と記し、さらに2島の住民らに対し「内報に動揺せず初志貫徹のため共に奮斗せん この情報の真相照会中」と呼び掛けたことが記され、群島全体での復帰を目指したことがうかがえる。

日記は25日、同市名瀬の市民交流センターで開かれる復帰69年記念式典で初公開された後、奄美博物館などで展示される。

同書はA5版170ページ。定価1200円(税別)。25日の式典会場や楠田書店で販売する。島外への発送(送料必要)も受け付けている。問い合わせは同書店(電話0997―52―2631)へ。