集落で独自に空き家対策

空き家の改修によって現在は本土から移住してきた世帯が暮らす家屋の前に立つ大瀬昭信さん

市事業など活用 改修や美化、移住者呼び込む
笠利町宇宿

 奄美市笠利町の宇宿=うしゅく=集落では、集落の主要団体で構成する「宇宿集落きょらの郷=しま=づくり会」(大瀬昭信代表)を組織し、集落の課題である人口減少対策へ空き家を改修しての移住者受け入れに取り組んでいる。活動費は市など行政の支援事業を活用、子育て世帯を優先することで集落にある小学校の児童数増にもつなげている。

 集落は同町の東部に位置し127世帯約250人が暮らす。区長代理でもある大瀬さん(71)によると、集落会、青壮年団、婦人会、老人クラブ、子供会で構成する同会は2017年度に発足した。

 人口減のほか、高齢化に伴う若年層の減で「将来的に集落活動や行事などが行われなくなる状況になりつつある。本気で人口を増やしたい」として同会では、UIターンの移住者受け入れに乗り出すことになった。集落内には長年空き家になっている家屋が数十軒あったことから、放置されると危険家屋となることが懸念されるとして解消を目指すことに。行政の事業を導入、改修可能な空き家をリフォームし賃貸住宅化を計画した。

 最初に着手したのが老朽化から取り壊す予定だったという旧教職員住宅(1世帯分)。その後は民間の空き家改修に取り組んだが、「所有者は本土で暮らし、地元には身内もいない状況でも家財道具がそのままで、すぐには処分できず、家財道具をどうするかがネックとなった。同じ敷地内にある家屋なら家財道具がある所とない所に分け、ない家屋を改修し貸し出す方法もとった」と大瀬さん。家屋のリフォームにあたって外部など専門業者に依頼することもあったが、ほとんどを集落民で協力し作業。トイレの水洗化も図った。

 空き家の持ち主と家を借りたい人の間に集落が入り、賃貸契約や申込契約、賃料などの窓口を集落が一括して担う仕組み。賃貸期間は10年間の契約としている。これまでの改修などの取り組みにより発足当初27軒あった空き家は、21年度には17軒に。22年度現在では19軒となっている。空き家の解消は入居だけでなく、改修が困難なものは撤去も。市の支援事業だけでなく、水土里=みどり=サークル活動など県や国の事業も活用し環境整備、美化活動の一環として進めている。

 集落には小学校がある。改修した空き家に子育て世帯が入居したことで児童数が増加。大瀬さんは「21年度の児童数は37人と10人ぐらい増えた。ペットを飼う世帯には一戸建てが好まれており、受け入れは子どもがいる世帯を優先している。宇宿小学校では集落の伝統芸能である『稲すり踊り』が継承されており、子どもたちの存在は集落の活気につながっている」と話す。

 行政の事業を活用しての集落の率先した取り組み。2022年度県共生・協働型地域コミュニティづくり推進優良団体として、宇宿集落きょらの郷づくり会は地域コミュニティ組織部門で奨励賞に決定した。大瀬さんは「空き家をそのまま放置するのはもったいない。集落の出身者である所有者の理解・協力のもと活用を図り、移住者を呼び込み定住につながるよう今後も活動を続けたい」と語った。