世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム=9日、徳之島町生涯学習センター
【徳之島】世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム「自然×文化から見つめなおす私たちが住む世界の宝・徳之島」(環境省徳之島管理官事務所主催)が9日、徳之島町生涯学習センターであった。登録推進に関わった専門家ら4氏が講演。「奇跡の島」の「自然環境保全、人と自然共存モデルの発信」にも期待。パネル討議では自然や環境文化の魅力と活用も探り合った。
自然と人が深く関りながら育まれてきた「自然」と「島の文化」の価値や魅力を探り、今後の地域づくりにどう生かしていくのか専門家と一緒に考えよう―と企画。SNSを通じた事前予約制で自然保護団体や行政、住民など約70人が来場した。
第1部「自然と文化の専門家による講演」の各演題(講師)は、▽「世界自然遺産と琉球列島の自然」(土屋誠・琉球大学名誉教授、世界自然遺産地域科学委員会委員長)▽「世界自然遺産と環境文化」(星野一昭・日本国際湿地保全連合会長、元鹿児島大特任教授、世界自然遺産地域科学委員)▽「徳之島の遺跡から探る人と自然との関わり」(具志堅亮天城町学芸員)▽「アマミノクロウサギからみた人と自然との関わり」(山田文雄・琉球大客員教授、世界自然遺産地域科学委員)。
土屋氏はSDGs15番目(陸の豊かさも守ろう)にも共通した生物多様性の持続など、世界自然遺産登録意義などを解説。その上で「徳之島・琉球列島・地球も〝一つの生態系〟」、「自然環境保全のモデル。人と自然の共存のモデルの発信を」ともアドバイス。
星野氏は、奄美群島国立公園の価値を生かした「歴史や環境文化の提供、にぎわいや活力にあふれた地域づくり」。「希少動植物値が絶滅せずに生き残った小さな豊かな島、奇跡の島を生かした地域づくりを」とも期待。
具志堅学芸員は、約3万年前から現在にかけた気候変動(海水面上昇)の歴史や、日本最大級の水中鍾乳洞「ウンブキ」(天城町浅間湾屋)内での土器(約7千年前)発見例など環境文化、サンゴ造礁形成の過程なども解説。
山田氏は、徳之島のクロウサギの特徴(島の成り立ちを反映した固有性や形態)、人と生活の関り(生息地の改変、交通事故など)も解説。「クロウサギは捕食者(種)の防ぎ方を知らない。数は増えているが(ネコ対策など)対策を止めると元に戻ってしまう」ともあらためて指摘した。
第2部は、夜光貝工芸家・県希少野生動植物保護推進員の池村茂さんを含む同5氏をパネリストに、「徳之島の自然や環境文化の魅力と活用」をテーマにパネル討議。農業と自然の関わりなど多岐にわたって意見交換した。
来場者の1人(50代男性)は「諸課題の解決・具現化に、もはや行動・実行にこそ移すべき時期にある」とも話していた。