外来種カイガラムシソテツ被害

カイガラムシの付着により枯れたソテツの葉

民間対策促進へチラシ配布
薬剤防除 浸透性より「こまめな対応」

 奄美市の名瀬地区や龍郷町などで国内では初確認だが、海外でソテツの害虫として知られているカイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS)被害が出ている。被害葉の除去や幹への薬剤散布、カイガラムシの飛散防止を講じた処分などの対策は県大島支庁の周知取り組みに基づき、道路や公園などでは管理する行政によって進められているものの、個人宅や私有地など民間の対応も求められている。今月に入り奄美市では被害状況や防除方法を掲載したチラシの全戸配布が行われており、所有者や企業まで浸透するかが対策の鍵となりそう。

 大島支庁林務水産課によると、チラシは市の広報誌と共に配布。CASは「急激な増殖、分布拡大が懸念されることから、早急な対応が必要」として被害の特徴のほか、対策として▽被害葉は切り落として処分▽被害葉を切った後、幹や葉柄切り口など樹体全体に薬剤を散布▽薬剤散布後もこまめに観察。新たに付着する可能性があり、発見しだい適宜追加散布▽被害地周辺については、健全なソテツも冬季には剪定=せんてい=を行う―など挙げている。なお、龍郷町は昨年11月で同様のチラシを全世帯に配布済み。

 駆除で使用する登録薬剤で県森林技術総合センターが奄美での使用を勧めるのがマシン油乳剤。これに対し海外でのCAS被害について情報を収集し、奄美での対策について関心を示す高梨裕行さん(47)は「前例に従うためにもフロリダの専門家グループと連携して、適切な農薬を使用するしか道はないのではないか。ソテツを全体的に対害虫で毒草化してしまう農薬である浸透性農薬の使用を」と指摘する。

 同センターが主な登録薬剤として掲げているもののうち、浸透性ではマツグリーン液剤などがある。センターの岩元高治所長は「浸透性の薬剤は効果があるものの、発生初期から5回以内など使用するには回数制限(残効期間の関係で)があり使いづらい。また、飛んできた生き物が接触すると死んでしまう可能性もある」と説明する。マシン油乳剤の場合、使用時期・回数といった条件はなく、油膜が虫を覆い窒息させて殺虫する。環境への負荷が少ない一方、効果は弱め。岩元所長は「しっかりとこまめに観察を行い、付着が確認できたら何回も散布してほしい」と呼び掛ける。

 県は被害拡大を防ぐため確認調査にも取り組んでいる。支庁林務水産課は「被害が目立つのは名瀬地区と龍郷町。両地域の先端部分で被害の状況を確認し、被害が出ていない所に広がらないよう注意している」と話す。

 外来種のカイガラムシであることから、海外から輸入されたソテツにより持ち込まれたと推測できるが、国内経由も考えられる。輸入ソテツ対策について県は防疫機関である農水省植物防疫所に情報提供しているほか、島内の造園業者に注意喚起している。