知名町で言語・方言サミット開幕

言語・方言の聞き比べで登壇した各地域の話者ら=知名町=

 

聞ける環境は学ぶチャンス
基調講演や島唄の披露も

 

 【沖永良部】2022年度危機的な状況にある言語・方言サミット奄美大会in沖永良部(文化庁、鹿児島県、知名町など主催)が28日、知名町あしびの郷・ちなで開幕した。参加者は、方言の聞き比べや島唄の披露などを通して、言語の多様性の大切さを確認。沖永良部の島ムニ(方言)で基調講演した言語学博士でオランダ出身のハイス・ファン=デル=ルベさんは「地元の言葉を聞けるのは、またとないチャンス。多くのことを学べる」と述べた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は09年、世界で約2500の言語が消滅の危機にあると発表。国内においてはアイヌ語、八重山語、与那国語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語の8方言・言語が含まれている。

 サミットは、消滅の危機にある言語・方言の状況改善につなげることを目的に2015年から開催している。今回は、29日までの2日間の日程。

 初日は、島内外から約160人が来場した。沖永良部高校エイサー部による演舞の披露を皮切りに、基調講演や言語・方言の聞き比べが行われた。

 開会式で塩田康一知事は「方言は各地域において育まれた貴重な文化。いまの子どもたちの祖父母らが元気なうちに言葉を守り継承していくことが必要だろう」と述べた。

 「島ムニの研究・勉強」と題して講演したハイスさんは「危機言語の再活性化にはコミュニケーションを中心とした語学教育法がよい」と述べ、「地元の言葉を話せるのに、あえて使わないのは、その言葉を消すのと同じだ」と忠告した。

 聞き比べでは、奄美大島、徳之島、沖永良部島東部・中部・西部、喜界島、与論島(オンライン参加)、アイヌ語の8言語・方言の話者が登壇。「お会いできて光栄です」「明日、雨は降らないですか」などの文章を各地域の言葉で発表した。

 続いて、島唄や寸劇の披露があり、アイヌ語(沙流方言)の話者、関根摩耶さんは地域に伝わる座り歌や子守歌を紹介し、知名町中央公民館講座「しまむにサロン」のメンバー14人は、講座の様子を方言寸劇で再現した。 

 29日は、危機的方言の現状と取り組み状況の報告のほか、研究者と知名町の住民らをパネリストに招いて島ムニ継承の活動を家庭で行うことの意義について意見交換する。