移動規制なしも付着注意

名瀬港ではコンテナに積み込まれたソテツの株が島外に出荷されている(資料写真)

奄美大島からのソテツ島外出荷
健全ソテツ葉冬季に剪定「2月までに実行を」

奄美大島では外来種のカイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS(キャス))によるソテツ被害が出ているが、造園業者などによるソテツの島外出荷は続いている。農林水産省門司植物防疫所名瀬支所によると現時点では移動規制の対象になっていないものの、CASが付着していないか注意するよう求めている。

奄美大島からのソテツの島外持ち出しについて名瀬支所は「植物防疫法上の移動規制の対象になっていない」として法的に問題ないという立場。ただしCASの付着には注意を呼び掛けており、「十分に確認した上で付着していないものを出荷してほしい」としている。

名瀬港などでは定期船を利用し、コンテナに積み込まれたソテツが本土に出荷されている。ソテツは全て葉を切り落としており、株の状態。CASが付着していた場合、ソテツをはじめ、多くのソテツ科植物に加害することから、甚大な被害が県本土などにも拡大することになる。

県森林技術総合センターによると、CASの寄生・被害の特徴として▽葉や幹に寄生し、葉では通常裏面から寄生、多発すると表面にも寄生し吸汁▽地下部の根にも寄生、地下60㌢の深さでの生息確認もある▽増殖力が高く(1年に8世代の発生(中国で確認)、雌成虫1匹から100匹以上に繁殖(台湾で確認))、数カ月で株全体が白い殻で覆われることも▽吸汁された部分は黄変し、被害が進むと全体が黄白色~褐色になり、激しい場合は1年以内に枯死に至る―などがある。

対策では被害葉は切り落とし処分、薬剤散布、こまめな観察のほか、被害地周辺については「健全なソテツも冬季には剪定=せんてい=を行う(寄生場所を減らす。また、新芽の季節に被害に気がつきやすくなる)」(同センター)を求めている。この剪定について「CAS被害が確認されている奄美市名瀬や龍郷町では、公有地・民有地を問わず2月までに取り組むべきではないか。甚大な被害を及ぼすにもかかわらず地元の関心が低い。気温が上昇する夏場などは作業の負担が大きく、またハブの危険性もある。冬場に青い葉も剪定する作業を進めてほしい」として実行を訴える声が地元から出ている。