農福連携を実践

農福連携で手塩にかけて育てた子牛の初出荷達成を喜ぶ利用者や職員たち=2日、伊仙町喜念

就業継続支援での和牛生産取り組みは県内初

和牛生産(繁殖)は県内初
初出荷に笑顔徳之島町の就労支援施設「どぅどぅ」

【徳之島】障がい者たちが農業分野で自信や生きがいを育み自立・社会参画を後押しする農福連携―。2021年11月、徳之島町亀津に新たに開設された障がい者就労継続支援B型施設「どぅどぅ」(管理者・仲昭吉代表)。その利用者たちが心を一つに手塩にかけて育てた子牛第1号が初出荷にこぎつけた。和牛生産部門での農福連携は県内初。暖かい陽光のもと笑顔の花が広がった。

管理者の仲代表(46)は元看護師で精神神経科の病院に16年、障がい者福祉サービス事業所(管理者など)に6年勤務。22年間の現場体験を基に「障がいを持つ方々が農業や畜産、自然と触れあう農福連携。動物との触れあいも通したアニマルセラピー効果」にも注目。「一人ひとりが自分らしく生きて、自分でも稼げる自信にもつなげたい。障がいを持った方々が、行きたいと思える農業・和牛生産の新しい就労支援事業所を」と一念発起。

「どぅどぅ」とは、島の方言で「自分自分」の意味。「自分が自分らしく過ごせる環境。お互いの個性を尊重し合い、働く楽しみや充実感を感じ合える場に」。知的・精神・身体障がい者を対象に定員20人。開設1年2カ月を経た利用者数は、県立養護学校高等部を昨春巣立った18歳(男性)から上は68歳(女性)まで島内3町在住の計17人。今春、同高等部を卒業する1人が新たに加わる予定という。

公園施設の清掃など受託作業と併せて、「農福連携」で取り組んでいるのはバレイショや島ラッキョウなど栽培、そして畜産(成牛6頭・子牛3頭)。畜産に取り組めたのは和牛繁殖経営に精通した職員の存在があり、初期投資面も含め、就労継続支援では県内初という。作業は安全面に配慮して草刈りや給餌、堆肥運びの補助など軽作業が主。工賃は月締めで支給される。その原資にも充てられる子牛の初出荷(セリ市出場)の達成に、利用者の1人・山田和弘さん(67)=徳之島町=は「うれしい。みんなと一緒に体を動かして働くのは楽しい」と目を輝かせた。

仲代表は「利用者さん方や職員ともに『ここで働きたい』と言われるよう楽しい・働きやすい・過ごしやすい職場環境にしたい。そのためには自然・地域・動物と触れあえる環境、充実感を提供していきたい」と話した。

自作のバレイショや島ラッキョウなど農作物関係では、3月3~4日、鹿児島中央駅アミュプラザ・AMU広場である「農福連携マルシェ2023・春の収穫祭」(県主催)に事業所ぐるみでの遠征参加・出品も計画している。