生還クロウサギを放獣

救護され治療を受けて完治。放獣直後に後ろを振り向いたクロウサギ=1月31日、徳之島町花徳(環境省提供)

救護・島外治療・完治
徳之島初、環境省発表

 【徳之島】環境省・奄美群島徳之島管理官事務所(田口知宏国立公園管理官)は3日、1月18日に徳之島町花徳の県道上で動けなくなっていた国指定特別天然記念物のアマミノクロウサギ(オスの幼獣)を救護し奄美市の動物病院で治療後の同月31日、放獣したと発表。傷害を負ったクロウサギが治療を受けて完治し、放獣されるのは同島初となった。

 同管理官事務所によると、同18日午前8時ごろ、同町花徳地内の県道80号上で動けなくなっていたクロウサギを住民が発見して同所に通報した。職員が保護すると、頭部を負傷しており治療が必要と判断。奄美野生生物保護基金を活用して、その日のうちに奄美大島に空輸。奄美市にある「ゆいの島どうぶつ病院」(佐藤花帆獣医師)に搬入した。

 診察の結果、頭部の負傷部位に化膿が見られたが、ほかには特段の異常はなく、抗生剤の投与治療などで完治させることができた。県道上ではあったが、交通事故独特の骨折などの大きなダメージがなかった。現在のところ傷害を負った原因は不明という。

 田口管理官(28)ら同所は「環境省は、クロウサギ保護増殖事業の一環で、交通事故やネコなどによる傷害個体の救護(保護・治療・飼育)を実施」。今回の救護個体の傷害原因は不明で、交通事故でない可能性が高い。軽傷だったことも幸いし「傷病救護された個体が放獣にいたるのは極めてまれ」とも。

 同島内における昨年1年間のクロウサギの交通事故死(ロードキル)確認数は計39件。うち与名間(天城町)、手々(徳之島町)、金見周辺(同)の県道629号線上が17件を占めた。

 あらためて「夜間はクロウサギの飛び出しに注意してゆっくり走って欲しい。ネコの室外飼育やノラネコへの餌やりは条例で禁止されている。人とペットの正しい付き合い方を守って欲しい」ともアピールする。

 【奄美野生生物保護基金】奄美群島の野生生物保護のため環境省・県・群島12市町村でつくった「奄美自然体験活動推進協議会」が管理・運用している基金。