離島の「院内血」共に考える

離島での院内血や血液照射をテーマに基調講演する大木さん

県立大島病院で学術大会
大木さんが基調講演 県診療放射線技師会

県診療放射線技師会(太田原美郎会長、正会員596人)の2022年度「秋季学術大会・大島地域研修会」が4日、奄美市名瀬の県立大島病院救命センターであった。同院麻酔科部長で医学博士の大木浩さん(59)が基調講演。診療放射線技師にも関わりがある、離島のより安全な「院内血」の供給のあり方などについて共に考えた。

テーマは「大島地域における院内血取扱いの現状と血液照射に関して」。大木さんは「大量出血を伴う外傷には迅速な輸血が不可欠。(本土から送られる)日本赤十字社から到着を待つ余裕はない」など離島の血液供給体制の脆弱性を説明した上で、院内で採血された血液「院内血」を使う供給体制構築の重要さを強調した。

厚生労働省の指針では、院内血は「特別な事情がない限り行うべきでない」とされているが、離島での大量出血症例には施行せざる得ない場合がある。大木さんは、リンパ球が体組織を攻撃する「GVHD(移植片対宿主病)」によるリスクを除く放射線装置を使った「血液照射」について解説。登録ボランティアの採血から患者に届くまでをVTRなどを交えて紹介し、「莫大な尽力が必要。奄美がいかに特殊な地域で、より迅速で安全な供給体制の構築が急がれている」と訴えた。

輸血と診療放射線技師との関わりについては、がん患者の治療や疼痛緩和に使われる照射装置「リニアック」が血液照射で代用されていると説明。大木さんは「診療放射線技師が奄美群島の輸血医療で重要な役割を担っている。体制に困難を伴う離島の最後のとりで、一緒に守ってほしい」と呼び掛けた。

大会では、会員や医療メーカーから発表や研究報告があり、先端技術や最新情報など放射線技師を取り巻く最新事情を学んだ。現地約20人、ウェブ配信約80人、県内会員や地元医療関係者ら計約100人が耳を傾けた。