沖縄初、奄美ルーツの女性噺家・金原亭杏寿さん

「いつか先祖の墓も訪ねたい」と奄美に思いをはせる杏寿さん(提供写真)

11日、二つ目に昇進 「大島紬での高座」夢に

【東京】沖縄県初の「女流噺家」の金原亭杏寿(きんげんてい・あんじゅ)さんは、奄美大島にもルーツを持つ。男性社会で、花を咲かせようとするヒロインに迫った。11日、二つ目に昇進する杏寿さんは「大島紬での高座」を夢に描いている。

杏寿(本名・川満彩杏)さんと会ったのは、杏寿さんの師匠・金原亭世之介=よのすけ=さんが立ち上げた芸能事務所「キングプロダクション」(中央区東日本橋2―12―8、2階)。周囲にオフィス街が広がり東京スカイツリーが見えるが、レトロな風情も探すことができる。

杏寿さんの父方、祖父母は沖縄県だが母方の祖父・栄田穐雄(さかえ・たきお、93歳)さんが奄美出身(祖母は沖縄・渡嘉敷島)だ。「おじいちゃんは瀬戸内町の勝浦出身。10代で沖縄に移住しましたが、とても素敵な所と聞いております」。「第二の故郷」に目を輝かせる。

沖縄県内でタレント活動。さらに活躍の場を求め、2016年に上京した杏寿さんが「芸能活動に役立てよう」と偶然聴いたのが、世之介さんの独演会。「一本の映画を見たような没入感があり、衝撃を受けました。話と所作で観客を魅了する師匠に弟子入りをお願いしたところ『人生をかけてやるなら面倒見るよ』と快諾していただいた」。

入門の経緯を語るが、憧れの世界は驚きの連続だった。「前座の前の見習いが1年半、このまま何者にもなれないで終わるかも」の不安と「落語やらずに女優やってればいいのに」を笑顔に閉じ込めた。楽屋の準備、掃除、師匠方の着替えの手伝い…。「お茶の出し方も各師匠は違うので、大変でしたね」と独特な世界で奮闘、その間に話も覚えた。

17年秋に始まった5年と三月の修行を乗り越え、11日に「一人前」と認められる二つ目に昇進する。「本場大島紬での高座」を夢見る杏寿さんに、師匠は「世之介・杏寿の親子会もいいですね」と愛弟子に期待している。