瀬戸内町近代遺跡シンポ

調査成果報告をする、鼎丈太郎主査

パネルディスカッション=左から鼎主査(進行役)、赤司善彦館長、服部正策元会長、土田宏成教授、齋藤達志所長、木村淳准教授

「スケール大きさ全国的にまれ」遺跡調査報告 パネルディスカッションも

「瀬戸内町内の近代遺跡シンポジウム~奄美大島要塞・大島防備隊基地跡の調査成果とその価値について~」(同町協委員会主催)が11日、同町のきゅら島交流館で開かれた。2017~21年度に実施した、町内の遺跡内容確認調査の成果報告及びその価値についての講話や、有識者によるパネルディスカッションなどが行われ、来場者とWeb参加者合わせ島内外から100人以上が視聴した。

保存状態の良い遺跡調査へ

同町教委社会教育課の鼎=かなえ=丈太郎主査は「内容確認調査(発掘・測量)の成果報告」を行い、国指定文化財に指定するよう文部科学大臣に答申された、「西古見砲台跡」「安脚場砲台跡」「手安弾薬本庫跡」を含む、6史跡について写真を交えながら報告。「今後も分布調査で判明している、保存状態などの良い遺跡の調査を進める」などとした。

鼎さつき調査員が、「文献資料調査の成果報告~絵図と写真を中心に~」と題し、米軍が撮影した空中写真や武装解除時の写真を交えながら調査成果を報告。「土地が持つ記憶(歴史や文化)を知ることで、大島海峡の魅力や価値がより鮮明になる」とした。

講話は、元東京大学准教授で町文化財保護審査会の服部正策元会長が演題「軍事遺跡の眺め方(なぜか無口な遺跡群)」。聖心女子大学の土田宏成教授が演題「日本史学・歴史教育から見た、遺跡の価値」。防衛研究所の齋藤達志所員が演題「軍事史から見た、遺跡の価値」で行われた。

また、東海大学の木村淳准教授が水中遺跡や諸外国の水中戦跡保護の事例、静岡県駿河湾の戦争遺跡などを事例発表。福岡県の大野城ふるさと館・赤司善彦館長は「奄美大島要塞跡は何がすごいのか 期待と課題」と題し総括。「残存状態が良好であり、スケールの大きさが全国的にまれな例」とし、「地元住民が誇りに思うような取り組みと他の行政と連携し観光へ活用することが必要」と述べた。

パネルディスカッションでは「戦争体験者が少なくなる中、地域の歴史を学び世界を見るツールとすることが必要」や「戦跡は単体ではなく、線から面へつなげトータルで見ることが必要」などの意見が出された。