共生プロジェクト講演会

地域共生について意見を交わす岡山隆二さん、小野博史課長補佐、安田市長、田中基次さん、盛谷会長(左から)

「参加しやすい仕掛け」を
奄美市、介護事業所協 多い困窮、貧困相談

 奄美市と奄美大島介護事業所協議会(盛谷一郎会長)は12日、同市役所で「共生プロジェクト2022年度」の一環として講演会を開いた。安田壮平市長も参加し、障がい者や高齢者が地域の中で孤独に陥らず、共生できる街づくりを目指には何が必要か、優先させるべきものは何かをディスカッション形式で話し合った。

 厚生労働省社会・援護局総務課長補佐、小野博史さんが、「地域共生社会の実現に向けた 包括的な支援体制の整備について」として講演。同省が補助事業として進めている重層的支援体制づくり(介護・障がい・子ども・困窮など従来タテ割りで行われてきた支援事業の壁を低くし、対象から取り残されがちな人をなくす取り組み)には、既存の窓口を生かしながら制度の狭間を埋めていく必要があると強調。住民主体の制度作りを行うには、「各機関が連携し、参加しやすい仕掛けを考えなければならない」と話した。

 「地域共生のまちづくり」とした講演を行った枕崎市在住の社会福祉士(天の杜合同会社代表)岡山隆二さんは、「地域住民の中でボランティアなどを行う熱心な人は20%、支援が必要な人が20%、中間にいる60%の人の力を借りなければ地域内での助け合いは成り立たなくなっている」とし、「仕事を持つ人が気軽に〝チョイボラ〟(空いた時間にほんの少しボランティア)する社会づくりをしなければならない」と語った。

 ディスカッションは岡山さんがコーディネーターを務め、安田市長、小野課長補佐、盛谷会長、農業と福祉の連携施設㈱リーフエッヂ(あまみん)田中基次代表の5人で行われた。

 安田市長は、「市では高齢者福祉課に『つながる相談窓口』を置き、断らない相談体制づくりを進めている。経済的困窮、貧困に関する相談が多い。自治力の強化を図っていく」と強調した。

 傍聴していた同市名瀬芦花部の特別養護老人ホーム「芦穂の里」副主任の皛納(きょうのう)富美香さん(34)は、「奄美には結の心があると喧伝されるが、今は薄れてきていると感じる。自衛隊員や県立病院の職員の妻たちと付き合いがあるが、
島にきて4年になる人が『島の友達ができない。疎外感を感じる』と言う」と話し、「そうした人と地元の人をつなぐ機関があることを知らない人が多い」と問題提起した。

 発言を受けて岡山さんは、「自然発生的なつながりができるのを待っている時代ではない。一歩踏み込んだアプローチが必要だ」と締めくくった。