イノシシわなにクロウサギ

有害鳥獣イノシシ捕獲用「くくりわな」に混獲されたアマミノクロウサギ=16日午後0時8分、徳之島町北部(提供写真)

両脚にはワイヤーが食い込んでいた(動画より)

「混獲」犠牲例も表面化? 自ら警鐘鳴らす
徳之島町北部

 【徳之島】徳之島ではサトウキビを食害する有害鳥獣のイノシシ捕獲用の「くくりわな(わな)」に、国の特別天然記念物アマミノクロウサギが誤って混獲されていた実態が16日、明らかになった。仕掛人自らの警鐘の事案提示によって自然保護関係者らが確認。後ろ両脚にワイヤーをくい込ませて身動きが取れずにいたが、幸いにも深刻なダメージはうかがえず速やかに放獣。証言では、わなを巡る驚くべき実態も浮き彫りとなった。

 自然保護関係者らによると、徳之島町北部の農業男性(70歳代)が16日午前、サトウキビのイノシシ食害防止対策で仕掛けていたわなの定時点検時に発見した。男性は、有害鳥獣駆除対策のわなを巡る同様の事例が〝公然の秘密視〟されてきたことを懸念、警鐘を鳴らすために連絡したという。混獲されていたクロウサギはオスの成獣(体重3㌔弱)。後ろ両脚を縛られたまま「ピーッ、ピーッ」と甲高い悲鳴を上げていた。

 恐怖心を抑えるため上着で体を優しく包み込み、両脚を痛々しく縛り上げていたワイヤーを解除。出血や骨折はうかがえず、両脚の力も確認して元の獣道へ。自力で跳ねて森林に帰り、一行からは「良かった、良かった」の歓声が上がった。

 男性によると、クロウサギの混獲例はじつは「昨年は6匹。今年はこれで2匹目」。イノシシ捕獲用のかごわな(鉄製)を使っていた14、15年前はクロウサギの死亡事故(圧死など)が多発。くくりわなに変更後もクロウサギ生息数増も影響してか続いた。驚くべきは「(累計)約30匹のクロウサギを誤って捕獲、多くを死なせてしまった」と自省を込めて吐露した。

 くくりわなは、イノシシやシカなど野生鳥獣を捕獲するわなの一種。獲物が通りそうな獣道に仕掛けて、獲物が足でわな板を踏み抜くとバネの力でわなが作動。ワイヤーが獣の足をくくり捕獲する仕組み。3千円程度から入手できるが、使うにはわな猟免許を要する。

 駆けつけた自然保護関係者らは、一気に表面化した今回のケースに「狩猟者の中には毎日点検しない人も。わなに掛かったクロウサギは猫や猛きん類に襲われるほか、放っておいても死ぬ。島内の狩猟者は約80人。私たちには『混獲死はロードキルより多いかも知れない。何も対策しなくていいのか』との叱責(しっせき)の声も」。対策として「(徳之島には)今だに自然保全の管理計画もなければ、世界自然遺産対策室もない。連携した体制づくりが必要」とも指摘する。