「植物病院」4月開設

連携協力宣言書に署名した東大の難波成任特任教授(左)とJA鹿児島県経済連の出原照彦理事長=22日、東大伊藤国際学術研究センター

 

連携に関連する発表会を終え、笑顔で記念写真に納まる「植物病院」の関係者ら

 

JA県経済連東大と連携 病害虫に対応
県内唯一の植物医師(奄美出身)着任へ

 

 【東京】JA鹿児島県経済連は22日、東京都文京区本郷で東京大学、JAあいち経済連と「植物病院」についての発表会を開催した。4月に鹿児島県内初の設置となる植物病院は、東京大学植物病院と連携して病害虫への迅速な対応が期待される。

 東京大学伊藤国際学術研究センターで行われた発表会では、植物病による被害が「世界で毎年200兆円以上」とする植物医科学の現状などが報告された。そうしたなか、植物病院設置の背景が説明された。2018年秋から鹿児島・宮崎両県を中心にサツマイモの株の立ち枯れや腐敗が発生、全国に拡大。JA鹿児島県経済連として国や各研究機関へ相談、翌19年、国内未発生の「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」と判明。やがて東大植物病院が遺伝子判断キットを開発、早期対策が可能になったことによるもの。

 東大特任教授で日本植物医科学協会の難波成任代表理事は「植物病に国境はなく鹿児島は、事実上南のとりで。植物病院ができるのは大きな意味がある」と力説した。また、県経済連の出原照彦代表理事(理事長)は、県内の農業や病害虫の特徴を解説しながら「JAあいち、東大と連携を取りながら南のとりでとして奮闘したい」と抱負を話した。

 4月に県経済連食品総合研究所に設置される「植物病院」は、全国で6カ所目。JAとしては、あいち経済連に次ぐもの。
技術主幹で植物医師(病害虫や雑草の専門家)1人と、職員の2人体制で週2日程度の開院予定となっている。病害虫外観診断、病害遺伝子診断のほか、薬効試験・駆除指導などにあたる。さらに、同院と農家・指導員との相談・依頼を通じての農業者の所得拡大、地域の活性化、県農業開発総合センターとの連携などの将来像も視野に入れている。

 県内唯一の植物医師で、奄美出身の德永太藏さんは「幼い頃に奄美が北限だった食葉害虫のキオビエダシャクが、鹿児島本土でも頻繁に発見されるようになった」。自身の経験も踏まえ、北上しながら拡大する状況を説明した。

 加えてサツマイモ基腐病だけでなく、ミカンコミバエ、アシビロヘリカメムシなど、他の作物でも見られる病害虫へ懸念を示した。德永さんは「奄美群島にはたくさんの果実がある。古里を守ることで、本土も守っていきたい」と植物病院設置の意義を語っていた。