ソテツCAS被害

ソテツのカイガラムシ被害は公有地で対策が進む一方、手つかずのまま放置されたものもある(奄美市名瀬で)

新芽時期の警戒必要
公有地、葉切除など対策進む

 外来種カイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS〈キャス〉)による奄美大島のソテツ被害は、緑化植物として植栽されている公有地では冬場にかけて被害葉の切除や薬剤散布、健全葉も剪定=せんてい=などの対策が進められた。民有地も行政機関の啓発によって対策が行われているが、場所によっては未着手のままもある。気温が上昇する春から初夏にかけては新芽の時期、CASが寄生する可能性があることから再度の薬剤散布が求められている。

 県大島支庁建設課によると、葉が黄白色~褐色に変色したソテツを重点にした切除(切り落としての処分)や薬剤散布を行ったのは奄美市名瀬や龍郷町の国道58号沿いが約130本(昨年12月と今年1月)、県道は名瀬―瀬戸内線と同龍郷線が約910本。県道沿いでの昨年10月と11月の作業では芦花部集落(名瀬地区)の自治会も協力し、約280本のソテツを処理したという。

 こうした道路や公園、公民館、学校など公有地の状況について被害調査や情報提供などを行っている県大島支庁林務水産課は「管理する県・市町村の取り組みにより対策がほぼ済んでいる」と説明。公有地では被害葉だけでなく健全葉の剪定も行われ、幹だけの状態となったソテツがほとんどとなっている。

 一方、民有地については龍郷町が昨年、県森林技術総合センターが公開している資料に基づきCAS被害の特徴や対策方法を記したチラシを全戸配布。奄美市も今年に入り広報誌と共に配布、冬の間の対策を呼び掛けた。所有者の中には対策に取り組む動きがあるが、人が入り込めないような崖地や所有者が不明となって場所などのソテツは現在も放置されたままとなっている。コガネムシなど甲虫類の中にはカイガラムシを運ぶ性質があることから、公有地で対策が進んでも民有地で未着手の所があると再び被害が広がる可能性を否定できない。

 公有地など対策が施された地域でも新芽への寄生に注意が必要。同センターは「新芽が展開し、葉が固まった時期に、再度薬剤散布」を呼び掛けており、散布時期の目安は葉色が濃くなり、展開した葉の葉先が硬く、触ると痛いと感じる頃としている。薬剤の注意点は、▽新芽時期のマシン油乳剤の使用は薬害の恐れがあるため、浸透移行性の薬剤使用(マツグリーン液剤2やオルチオン乳剤など)▽新芽の展開前に散布しておくことで、新芽展開中の薬効も期待―などを挙げている。