南西諸島へ力点 〈中〉ミサイル配備

陸上自衛隊勝連分屯地ゲート前(うるま市)

草の根で阻止へ連帯

沖縄本島中部の東海岸に位置するうるま市。世界遺産の勝連城跡や海中道路などの観光スポットのほか、古くからの文化や芸能が数多く残っている。

勝連半島東側の高台にある陸上自衛隊勝連分屯地。防衛省などによると、日本復帰に伴い、1973年5月に開設。米軍から返還された基地や施設を引き継いだという。

陸自は、勝連分屯地に地上から海上の艦艇を攻撃する地対艦ミサイル部隊を配備する。沖縄本島への配備は初めてで、中国の海洋進出などを念頭に南西諸島防衛の「空白地帯」解消につなげるのが狙いとみられる。 

同分屯地への新編部隊は、奄美大島、宮古島、石垣を含め4カ所の地対艦ミサイル部隊を指揮統制する役割を担うものとみられている。

配備されるのは長射程ミサイルの12式地対艦誘導弾の能力向上型。

地対艦ミサイル部隊はすでに瀬戸内分屯地にも配備されている。昨年、奄美駐屯地で日米共同訓練が行われた際、幹部自衛官に質問をぶつけたことがある。「現行のミサイルは射程約200キロとされているが、それを改良、開発し1000キロ超えに延ばすことを目指しているのか…」。幹部は否定も肯定もしなかったが、表情は満面の笑顔だった。

取材でよく聞いたのは「事件や事故を起こす米軍は迷惑だが、災害や急患搬送などに対応してくれる自衛隊は歓迎」であった。

だが、自衛隊と米軍が一体となった離島防衛訓練や軍事費急増などを見逃してはならない。事実、徳之島などでは日米の垂直着陸輸送機オスプレイが飛来し、共同訓練を行っている。奄美大島でも毎年のように共同訓練を展開するなど自衛隊と米軍は切り離すことができない存在となっている。

このほど閣議決定された安保関連3文書。外交や防衛などの指針である「国家安全保障戦略」、防衛目標や達成方法をまとめた「国家防衛戦略」、自衛隊の体制や経費などを示した「防衛力整備計画」の三つ。

同文書には、自衛目的で「敵」のミサイル発射基地などを攻撃する「反撃能力」の保有が明記されている。

「反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の3要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最低限度の自衛の措置として相手の領域において我が国が有効な反撃を加えることを可能とする自衛隊の能力をいう」

日米同盟のさらなる強化を掲げ、南西諸島の空港や港湾などを整備・機能強化する方針などが打ち出されている。

昨年、住民が戦争に巻き込まれることへの危機感を持った市民有志が「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」を立ち上げた。 日米両政府の台湾有事などを想定した南西諸島の軍事基地化に反対し、沖縄を再び戦場にさせないことが目的。ミサイル配備や軍事要塞化反対へ草の根で連帯することを確認。写真展や学習会を開くなどして啓発を続けている。

賛同した市民団体「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」の山城博治・共同代表(70)=沖縄市=は「戦争ができるような基地はいらない。沖縄を戦場にはさせないし、ミサイル配備を許してはならない。奄美とも連携し、配備阻止に取り組んでいきたい」と力を込めた。