下水汚泥から発生するガスで発電

バイオガス発電事業に共同で取り組む契約を締結した安田市長(右)と林支店長

奄美市とプラント会社が事業締結
循環社会実現と財源確保期待

 奄美市は9日、上下水道のプラント建設などを手掛ける月島機械㈱(TSK=本社・東京都)と、下水汚泥処理の過程で発生するバイオガスを利用した発電事業を共同で実施する契約を締結した。締結では、同市名瀬長浜町にある市名瀬浄化センター内に同社が発電施設を整備する計画で、6月から施設建設に着手、10月1日から売電事業を開始する予定。固定価格買取制度(FIT)による売電収入で、施設の建設、維持管理、運営などの経費を賄う計画で、事業により同市では、20年間で約5千万円の収入を見込んでいる。

 同日、市役所で調印式があり、安田壮平市長と同社福岡支店の林伊知郎支店長が締結調印した。

 事業は、市とTSKが役割を分担する官民共同事業方式によるもので、処理施設で発生するバイオガスを市がTSKに売却し、売電収入を得る。発電施設はTSKが整備するため、市の財政負担はなく、財政悪化が懸念される下水道事業の新たな財源確保につながることが期待される。

 また、下水汚泥処理の過程で発生するバイオガスは、未利用の再生可能エネルギー源であることから、持続可能な循環型社会の構築や地球温暖化対策の一つとして期待される。

 市などによると、下水道バイオガスの有効利用により、一般家庭約220世帯分に相当する年間約79万㌔㍗の発電量が見込まれるほか、年間約307㌧の二酸化炭素削減にもつながるという。

 TSKは2014年度から全国の自治体などと共同で同様のバイオガス発電事業を実施しており、九州でも福岡、大分、長崎、熊本、宮崎各県の自治体などで事業を展開。鹿児島県内の自治体と共同で行うのは奄美市が初めて。

 安田市長は「導入により持続可能な循環型社会の実現とともに下水道事業の新たな財源確保にもつながる」などと、事業効果を期待。林支店長も「バイオガスを利用した電力供給により、地球温暖化防止や脱炭素社会に貢献できる発電事業の普及拡大に取り組んでいきたい」などと述べた。

 同市の下水道事業は、1983年度に名瀬地区で供用開始。2022年3月末の普及率は93%と全国的にも高い水準にある一方で、人口減少や節水技術の進歩などにより使用料収入は年々減少、経営環境は今後より一層厳しくなることが予想されている。供用開始から約40年が経過し老朽化が進む施設の更新費用も財政を圧迫しており、バイオガス発電事業への期待は高い。