奄美市で登録1周年シンポ

自然遺産を活用した地域づくりで議論を深めた「世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム」

 

 

自然遺産で「地域づくり」考察
専門家らが講演やパネル討論
あり方や将来の姿探る

 

 

 世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム「奄美の世界自然遺産登録とこれから」(環境省主催)が11日、奄美市名瀬の奄美観光ホテルであった。専門家や行政、地元関係者らが「奄美の自然の価値・魅力を生かした地域づくり」をテーマに、講演やパネル討論を実施。生態や森林環境、観光、文化といった多様な視点を通じて、自然遺産を生かした地域づくりのあり方や将来の姿を考えた。

 シンポジウムは約70人が聴講。第1部は、奄美・沖縄の世界自然遺産地域科学委員会委員長の土屋誠琉球大学名誉教授、副委員長の米田健鹿児島大学名誉教授、委員の小野寺浩同大客員教授の3氏が講演し、「琉球列島と世界自然遺産、私たちの役割」「生態学から見た奄美大島」「奄美モデルのススメ」を主題に、自然遺産の価値や可能性を展望した。

 土屋委員長は、数ある保護区を連携させる「琉球列島まるごとミュージアム」を提案。「人間は脳や細胞があってこそ一つの生態系。どこかが一つが崩れると生態系はおかしくなってくる」と述べ、「奄美大島、琉球列島、関係者全員で恵みを与えてくれる自然を保全し、自然に恩返しするモデルを発信しなければならない」と訴えた。

 米田副委員長は奄美大島の雨が作った起伏に富んだ地形について解説し、「傾斜地が多様な環境を生んだ。それぞれの環境に絶滅危惧種が入り込むことで多くの種が残れている」と緩衝地帯の役割の重要性を主張。また、小野寺委員は「環境型文化」などをキーワードに掲げ、「観光一極ではいずれ厳しくなる。奄美には紬や闘牛、シマ唄やケンムンなどがある。新しい自然保護、地域振興を奄美発で作っていくべきだ」と期待を込めた。

 第2部のパネル討論では、安田壮平奄美市長、喜島浩介奄美大島エコツアーガイド連絡協議会会長ら4人のパネラーが新たに参加。「ガイドの質向上」「里山などの保全に向けた森林材活用」「SDGsや研究の拠点づくり」などが意見に挙がり、議論を深めた。

 土屋委員長は最後、子どもを対象にしたシンポジウムなども提案。「ユネスコは定期的にチェックに来る。継続的活動へは、これからが大切だ」と呼び掛けた。