インターンシップ学生も商品開発

タンカンを原料にした芳香蒸留水などの商品づくりに取り組んだ野上結以さん(左)と佐藤優衣さん

建物が完成した加工棟と田中基次さん

余剰作物や加工後の残渣活用 龍郷町の事業所で
タンカンの芳香蒸留水 市場性期待

 農福連携や六次産業化に取り組む㈱リーフエッヂ(田中基次代表)=龍郷町大勝=は、余剰作物や食品加工(ジェラートやハーブティー)で発生する残渣=ざんさ=を活用した商品づくりに乗り出しており、商品開発の拠点となる加工棟も完成した。今後、減圧蒸留器などの器具を導入し夏から稼働する計画だが、本格化を前にした商品開発にはインターンシップ(就業体験)で来島している2人の学生も関わっている。現在が旬で初めて味わったというタンカンを原料にした芳香蒸留水づくりに取り組み、商品としての市場性に期待を寄せる。

 先月13日から今月17日までの日程で、同社でインターンシップをしているのは明治大学文学部の野上結以=ゆい=さん(19)、横浜市立大学国際商学部の佐藤優衣=ゆい=さん(20)。東京生まれと都市部で育った野上さんだが、地方創生や食、蒸留飲料に関心があり、同社が運営する「あまみん」(障がい者就労支援事業所)の利用者と共に展開している事業を体験したいと選択。佐藤さんは大学のゼミでマーケティングなどを学ぶとともに、食と福祉、ヘルスケアへの関心から「これしかない」と同社での体験を希望した。

 蒸留水やエッセンシャルオイル(精油)づくりにあたり原料にしたのがタンカン。2人は収穫作業も体験したが、野上さんは「涙が出てしまうほど酸っぱいものが苦手でかんきつを食べようとは思ってなかった。ところがタンカンは甘くてとてもおいしく、タンカンというかんきつを初めて知った。東京など都市部で流通していないのがもったいないくらい」と語り、味わってすぐに奄美タンカンのファンになったという。

 そんなタンカンを原料にした香りの商品。佐藤さんは「皮の部分などと水を混ぜて液体にするため蒸留すると、すぐに部屋中がかんきつの爽やかな香りに包まれるほど。香りの強さが魅力的」と指摘し、芳香浴として加湿器を使った商品の活用を提案する。「かんきつを原料にした蒸留水などは出回っているが、タンカンが原料の商品はないのではないか。かんきつ系の香りの効能として質の高い睡眠や気持ちの落ち着き、前向きになるなどがある。インターンシップは間もなく終わるが、今後もオンラインなどで商品開発に関わりたい」と2人は声をそろえた。

 1カ月滞在となる龍郷町をはじめとした奄美の印象については「空がきれいで、自然、人、作物とすべてが素晴らしい」と感想を伝え、佐藤さんは「老後の移住先と考えていたが、卒業後は田中さんの所で働かせていただけたら就労し、大学で学んだことを生かしたい」と意欲をみせる。

 学生2人が携わった商品開発を本格化する加工棟は四つのスペースがある。水洗いから始まり、選別などの作業、乾燥化(乾燥機)、最後に減圧蒸留器での蒸留へと進む。田中さんは「ハーブティーをつくる場合、有機農業で行っているため原料となるハーブは5倍近く栽培しなければならない。タンカンなどの果物も有機栽培にこだわりたい。加工後の残りのほか、色・形などから市場に出荷できない規格外品など余剰作物を原料に芳香蒸留水や精油として商品化していく。蒸留後に残ったかすも堆肥化し、農地に還元して循環させていきたい」と語った。建物が完成したなか、機材(器材)は7月に導入し、その後に本格稼働する。