アマミヤマシギ 海を渡っての移動初確認

沖縄島のやんばる地域から奄美大島へ渡ったことが確認されたアマミヤマシギ(提供写真)

沖縄やんばるで捕獲
奄美大島へ、行き来示す

公益財団法人日本鳥類保護連盟、NPO法人奄美野鳥の会は16日、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されているアマミヤマシギが海を渡ったことが確認されたと発表した。沖縄島やんばる地域でGPSタグを装着した3個体のうちの1個体が奄美大島に渡ったことが確認されたもので、奄美と沖縄間の行き来を示す初の事例としている。

発表によると、アマミヤマシギは世界自然遺産に登録された奄美大島から徳之島にかけての狭い範囲のみで繁殖している日本の固有種。冬季は同じ世界自然遺産の沖縄島でも少数の生息が観察され、沖縄県の天然記念物に指定されている。しかし、沖縄島のやんばる地域ではひなが確認されていないなど繁殖の記録がなく、アマミヤマシギがどこから来ているか分かっていなかった。

元々近似種で渡りをするヤマシギとは翼の形状も違い、「渡りには適していない」ことから、「長距離を渡ることができるのか」との疑問も謎を深めていたという。限られた地域のみで生息するアマミヤマシギがどのように島間を移動しているのか、または移動していないのか、「その謎を解明することはアマミヤマシギを保全していくためにはとても重要な情報」として奄美野鳥の会では同連盟と共同で、アマミヤマシギにGPSタグを装着する試みを2021年度から行ってきた。

電波を飛ばし、衛星を通して位置情報を得るGPSタグは10㌘弱と軽量でアマミヤマシギの背中に装着している。今年1月にはやんばるの大宜味村、国頭村で捕まえた3個体にGPSタグを装着。野鳥の会の鳥飼久裕副会長によると、同月9日に国頭村宜名真で捕獲した1個体が、奄美市住用町石原付近まで渡っていたのが2月25日に確認された。直線距離で約190㌔㍍の移動になるという。

鳥飼副会長は「アマミヤマシギは、これまで奄美と沖縄間を行き来していると言われていたが、飛んで海を渡っているという確実な情報が得られていなかった。繁殖期(3~6月ごろ)の前に沖縄から奄美へ移動したのではないか」と指摘する。今回の確認は、アマミヤマシギが海を渡るということが直接的に確認できた初めての事例で、保全のための取り組みに役立てられるという。

日本鳥類保護連盟・奄美野鳥の会は「今後はこのような事例を増やしていき、アマミヤマシギの渡りの生態の全容を明らかにしていくとともに、この情報を元にアマミヤマシギが絶滅しないよう、保全活動に取り組んでいく」としている。調査活動は、サントリー世界愛鳥基金とLUSHジャパンからの助成金、クラウドファンディングの寄付者からの寄付金で行われた。

アマミヤマシギ キジバトくらいで、夜行性の中型シギ。雌雄同色で、雌が雄よりくちばしが長く、わずかに大きい。森林・農耕地に生息。全長34~36㌢。足はヤマシギより長めで太い(奄美野鳥の会発行『奄美の野鳥図鑑』より)