徳之島高OBの後輩卒業生たちへの〝ビッグなエール〟となった熱気球=17日朝、同校グラウンド(徳之島町)
上昇バーナーの轟音と炎に歓声を上げる卒業生たち
高崎正風さん
【徳之島】県立徳之島高校を今春卒業して〝島立ち〟間近の3年生たちを対象にした、徳之島町のふるさと納税活用事業イベント「徳高生にYellプロジェクト(PJ)」が17日、同校内であった。OBらの熱い思いと行動で、外海離島の同島初の熱気球体験を実現。トーク交流や有名スープ店の出張スペシャルサービスの「エール」でも思い出を刻み合った。
同町企画課(ふるさと思いやり応援推進室)によると「徳之島高校の生徒を応援したい」と寄せられたふるさと納税財源の活用イベント。気球体験は「3年間を過ごした学び舎や街並み、水平線などを空から一望しながら保護者や先生などに感謝のことばを伝えよう」と計画した。
同島初上陸となった熱気球は、同校出身で宮崎大学気球部OBらで構成する気球チーム「薩摩大志」の高崎正風代表(33)=徳之島町亀徳出身、宮崎県在住、航空機設備メーカー勤務=が肝いりで協力。メンバー8人を引き連れて遠征してきた。
やや高台に位置した同校野球グラウンドで午前6時すぎからあった同体験には、事前申し込みで希望した卒業生約30人(女子27人・男子3人)が挑んだ。当初は、熱気球をロープで地上をつなぎ約20メートル離陸する「係留フライト」を予定した。
しかし、地上の風速約2~4メートルの気象条件(上空はさらに強い)から安全性を最優先。ガスバーナーの熱風で巨大な気球を膨らませたまま、バスケット(大人4、5人用)への搭乗と、バーナーのレバーを引く点火を体験。「ゴーッ」という轟音とともに吹き上がる炎と熱風に黄色い歓声を上げつつ、記念写真に収まった。
大学進学で千葉県内に巣立つ丸野温人(はると)さん(18)=同町亀津=は、「飛んでないのに揺れたりして恐怖を感じた。先輩方や町役場職員の方々には、思い出を作っていただき感謝します。一人っ子だが両親にも感謝しつつ、千葉で精いっぱい頑張ります」と感無量の表情。
高崎さんは「私自身も大学進学で県外に出るまでは、徳之島の豊かな自然と暮らしが当たり前と思っていた。その島に帰省できることは幸せと感じるようになった」。後輩たちには「中学の体育教師だった父は、教え子たちに『希望を抱き、希望を追い、希望の実現を』が口癖だった。後輩たちにはその思いも伝えたかった。都会では夢と希望を持って活動して欲しい」。
気球体験の懸け橋役となった同窓会の米原祐磨さん(33)=町役場勤務=は「私たちは新設徳之島高卒の1期生。後輩たちの部活動遠征費など様々な支援をしているが、今回は町の協力で、島を離れる〝島の宝〟たちにエールを送るプロジェクトが実現。卒業生たちは将来、何らかの形でふるさとの島に役立つ人になって欲しい」とエールを送った。
引き続き、別の希望卒業生や在校生なども交え校舎(調理室)で交流会。2年前から同校の「総合的な探究の時間」でプロジェクト協力をしている㈱スープストックトーキョー(本社・東京都)スタッフらの県内唯一〝徳之島店〟開設によるスペシャルサービスにも舌鼓を打ち、思い出を刻んだ。