菊次郎ミュージカルに感動・歓喜・感涙

舞台狭しと熱演するメンバー

 

菊次郎の旅立ちを描いた一場面

龍郷町 進化し続ける27人の演者たち

維新の英雄・西郷隆盛と妻・愛加那の息子、菊次郎の生涯を演じた 舞台ミュージカル「KIKUJIRO」公演が18、19の両日、龍郷町体育文化センターりゅうゆう館であった。座席数600席がほぼ埋まり、フィナーレは歓声と拍手で包まれ、スタッフも観客も涙を流し子どもたちをねぎらった。

同ミュージカルは昨年3月の公演に続き2回目。1期メンバーが抜け、新メンバーを加えた27人(小学生14人、中学生9人、高校生4人)が1年間の猛稽古の成果を初めて大観衆の前で披露した。大島高校ダンス部20人、劇団ニライスタジオ(鹿屋市)3人も賛助出演、総勢50人が歌い、踊った。

舞台は、隆盛の流刑時から愛加那との出会い、菊次郎の誕生、米留学、台湾宜蘭(イーラン)支長時代を2部構成で描いた。菊次郎のそばには、本人にしか見えない(同高ダンス部1年・里山こころさん演じる)ケンムンが常にいる。奄美を離れ薩摩に渡るときは、ケンムンが菊次郎を導き、舞台から下り観客席の階段を上る演出がされた。会場は驚きを隠さず視線は一点に注がれた。

菊次郎の少年期を演じた栄隼平君(戸口小6年)の透明感のある声、青年期を演じた政村李玖さんの伸びやかな歌声が会場に響き、愛加那役の隈元莉々亜さんの悲しげな表情と歌が観客の涙を誘った(いずれも2022年度大島高校卒業生)。

天を恐れ敬い、人をいつくしみ愛する、隆盛が伝えた志(こころざし)「敬天愛人」を常に貫いた菊次郎。宜蘭支長時代には、地元・台湾人との交流を深めた。ダム建設時には、父の教えを貫いた菊次郎と現地の労働者のつながりが完成につながる様子を描いた。

総合演出を務めた同スタジオ主宰・松永太郎さんは、「子どもたちの自主性を重んじて演技指導をしてきた。(18日の)夜の部を乗り越えたら、(19日の)昼の部はもっとよくなる」と話し、舞台終了後、出演者全員を前にして、「大成功!この3時間の舞台の中で成長していた。プレッシャーと良く戦った」と褒めちぎった。

1年を通して演技指導してきた同町教育委員会・重田美咲さんは、「1期メンバーが(夏休みなどに帰ってきて)新メンバーを教えるというつながりができた。将来的には、舞台の指導者として成長してくれれば」と話した。

舞台には同町が主催したエッセイコンテスト入賞者8人のうち4人が出演している。碇山和宏教育長は、「まさに〝文舞両道〟。学校活動でもリーダーシップを発揮してくれていると聞く。教育面でみても、こうした異年齢交流が伝統になってほしい」と満足そうに笑顔を見せた。