23年地価公示

 

 

 

龍郷町瀬留玉里、県内1位続く
住宅地上昇率 求めやすい価格から需要安定
名瀬商業地「まだ回復至らず」

 

 

 国土交通省は22日、2023年1月1日時点の地価公示を公表した。鹿児島県内の平均変動率は住宅地が25年連続、商業地が32年連続の下落。下落率は住宅地が前年比0・2ポイント縮小し0・8%、商業地も同0・2ポイント縮小の1・1%だった。奄美群島の自治体では、龍郷町の住宅地2地点が上昇、うち同町瀬留玉里の1地点は上昇率3・1%(前年は3・2%)で、5年連続県内1位となった。同地点は奄美市名瀬地区に比べ価格が安く求めやすいため、需要が安定している。県内で住宅地変動率がプラスだったのは5市町村(鹿児島市、奄美市、姶良市、瀬戸内町、龍郷町)のみだった。

 地価公示は、地価公示法に基づき、毎年1回標準地1平方㍍当たりの正常な価格を判定し公示するもので、不動産鑑定士が全国2万6千地点について判定。一般の土地の取引価格に対して指標を与えるとともに、公共事業用地の取得価格算定の基準とすることで適正な地価形成に役立てている。

 県内では35市町(19市16町)の標準地291地点(奄美20地点)について調査。内訳は、住宅地193地点(同17地点)、商業地93地点(同3地点)、工業地4地点。奄美市の商業地2地点のうち1地点は前年まで名瀬幸町だったが、今回、市街地の中心部から飲食店街(屋仁川通り)の名瀬入舟町14番6外(名瀬入舟町14―15)に変更されている。

 【住宅地】県全体の平均価格は4万3100円で、前年比600円増。平均変動率はマイナス0・8%、下落幅は縮小した。上昇は52地点で前年比9地点増、横ばいは19地点で同4地点減、下落は119地点で同7地点減だった。

 最高価格は「鹿児島市西田2丁目16番27」の25万8000円で、前年比5000円上昇した。

 市町村の平均価格は鹿児島市の9万2100円が最も高く、次いで奄美市の8万2200円。以下、瀬戸内町3万3400円、徳之島町3万1000円など奄美の市町が上位を占めている。

 上昇率県内1位だった龍郷町瀬留玉里1501番の価格は1万6600円で、前年比500円上昇。変動率はプラス3・1%。変動要因について「街区整然とした埋立地の地域性に変更はない。環境や立地などから需要は安定」を挙げている。

 奄美の住宅地17地点をみると、最高価格は「奄美市名瀬伊津部町22番20」の11万3000円で、前年から千円上昇。下落幅が最も大きかったのは「和泊町和泊小積原527番1」のマイナス2・9%で、公示価格は1万3600円(前年比400円減)だった。

 【商業地】県全体の平均価格は12万8500円で、前年比200円減。平均変動率はマイナス1・1%、下落幅は縮小した。上昇は20地点で前年比6地点増、横ばいは16地点で同4地点増、下落は55地点で同10地点減。
 市町村別の平均価格は、鹿児島市の28万8800円が最も高く、以下、奄美市15万6000円、瀬戸内町6万2300円の順。最高価格は「鹿児島市東千石町13番34外」の114万円。センテラス天文館の開業により天文館通りを中心に客足増加の効果が見られつつあるという。

 上昇率県内1位は鹿児島市荒田1丁目41番10で、価格は34万2000円、変動率はプラス3・0%(前年プラス2・8%)。

 奄美の3地点の状況をみると、「奄美市名瀬末広町10番25(中央通りアーケード街)」の価格は15万5000円で、変動率は0・0%と横ばい。今回から標準地となった「同市名瀬入舟町14番6外」の価格は15万7000円で、3地点の中で最高価格。「瀬戸内町古仁屋大湊8番4」の価格は6万2300円、変動率はプラス0・5%と上昇した。

 地価公示県代表幹事の大吉修郎不動産鑑定士は、奄美の状況について「住宅地では、奄美市に隣接する龍郷町はベットタウン的要素を持ち自然も魅力的。Ⅰターンなど島外だけでなく島内移動もある。上昇率県内1位が続いている玉里地区は、取引自体はそれほど増えていないものの、価格が求めやすく閑静な住宅地のため今後も需要が見込めるのではないか」と指摘する。奄美市名瀬の商業地について「標準地が飲食店街の方に変わり、調査が1月1日時点のため、新型コロナウイルスの影響から観光客などの利用がまだ完全に回復しておらず、客足が戻りきっていない。周辺で進められている埋立地(マリンタウン地区)の開発が楽しみであり期待できる」としている。