島野菜保存へ調査

宇検村湯湾の中村さん(左)の畑で、島野菜の栽培方法などについて聞き取り調査をする江頭教授

山形大農学部の江頭教授 全国の在来作物データベース化
歴史や文化伝える「生きた文化財」

 日本各地で栽培されている在来作物の調査を行っている山形大学農学部の江頭宏昌教授(植物遺伝資源学)が28日、奄美大島各地で栽培されている在来作物の調査のため瀬戸内町や宇検村などを訪問、同町古志集落発祥の「古志大根」や、島内各地で栽培されているフル(ニンニク)、島らっきょうなどの島野菜を栽培する農家などから聞き取り調査を行った。

 江頭教授は、農林水産省の委託を受け、在来品種のデータベース化に取り組んでおり、2023年度中に奄美市名瀬有良などで栽培されている「あったどこね(有良大根)」や、「たーまん(田芋)」など全国各地で栽培される在来作物約270品種をデータベース化、つくば農業生産資源ジーンバンク(本部・茨城県つくば)のホームページに掲載する予定だ。江頭教授は27日に来島、29日まで島内各地で調査を実施する。

 江頭教授は28日、島内で在来品種の保存活動などを行っている奄美伝統作物研究会(森山力蔵会長、会員約20人)の会員らの案内で、瀬戸内町では古志大根の保存活動などに取り組んでいる同町の篠川小中学校(吉鶴正樹校長)などを視察した。

 宇検村湯湾では、フルや島らっきょう、サトイモなどの島野菜の栽培を続けている中村千江子さん(65)の畑で、栽培方法や食べ方、自家採種などの種苗管理状況などについて細かに聞き取った。

 江頭教授によると、在来品種の多くは、生産・流通効率が悪いことが多いため、市場価値が伴わず、全国的に栽培後継者が育たず消滅の危機にさらされているという。

 江頭教授は「在来品種は地域の歴史や文化を伝える『生きた文化財』で、作物がなくなれば、その土地の食文化も消滅してしまう。新たな品種改良の材料としても欠かせない貴重なもの」と指摘。データベース化する情報については「種子だけでなく、品種が受け継がれてきた歴史やその土地で親しまれた食べ方も含めた歴史と文化も一緒に保存することが大事。そのためには、現地でしっかり継承されることがとても大切になってくる」などと話した。

 調査を受けた中村さんは「母がずっと守ってきた作物の種子を見様見真似で育ててきただけ。島野菜が貴重なものになっていることを知り、これからも大切に育てていかなければと思った」などと話した。

 江頭教授によると、今月30日に約40種の在来作物をデータベースで先行公開、その後23年度末までに全国各地で調査した約270種の公開を予定しており、その後数年間をかけて300種ほどまで増やす計画でいる。データベース化について江頭教授は「在来作物の栽培に孤軍奮闘している全国各地の農家が、つながりを持つことで、栽培意欲が高まることを期待している。今回、調査した品種の追加掲載についても今後、検討したい」などと話した。