女子マネジャーが試合前ノック

公式戦でのノッカーデビューを果たした龍造寺さん=鴨池市民

「公式戦に関われて良かった」
池田・龍造寺さん(龍郷町 大勝小卒)

 【鹿児島】センバツ甲子園では、21世紀枠で出場した城東(徳島)の女子マネジャーが試合前ノックを担当して話題になった。1日に鹿児島市の鴨池市民球場で開幕した第61回九州地区高校軟式野球大会鹿児島県予選では、池田の龍造寺那波マネジャー(3年、大勝小卒)が「ノッカーデビュー」を果たした。「ノッカーとしてチームの公式戦に関われて良かった」と振り返った。

 小学校ではバレーボール、中学校ではバスケットボールをしていたが、高校では「何か違うスポーツにチャレンジしたかった」。小2の頃「甲子園で選手がスライディングしている姿がカッコ良かった」のがきっかけで野球が好きになり、甲子園やプロ野球を見るようになった。見るだけでなくプレーすることにも興味がわき、父・範興さんとキャッチボールをすることもあったが、本格的に野球をする機会はなかった。

 たまたま池田の軟式野球部の女子マネジャーに仲の良い先輩がいて相談したところ「プレーヤー」としての入部を勧められた。最初はキャッチボールもまともに届かなかったが2年間で「普通にできるようになった」(谷口晋介監督)。

 日頃の練習は男子と同じように打撃、守備の練習もこなす。相手校の監督の許可が出れば、練習試合には選手としても出場している。育英館との合同チームでも選手は龍造寺さんをいれて11人しかいないため「ポジションはどこでもやる」という。

 公式戦では、女子選手も開会式の入場行進の参加が認められていたが、コロナ禍で開会式が省略された。近年、公式戦でのノッカーが認められ、昨秋の大会では別のチームでも女子マネがノックを打っていたこともあり、この春に向けて練習の合間にノックを打つ訓練もしていた。

 デビューとなったこの日の鹿児島商戦。内野ノックから始まり、当初外野のシートノックは育英館の宮内洋文部長に交代する予定だったが「最後までやり切りたい」と立ち続けた。打球が詰まったり、狙った方向に飛ばないこともあったが、最後まで淡々と7分間のノックを打ち切った。

 「試合に集中していたので、ノッカーのことはあまり覚えていません」と試合後の感想。ノックの後はユニホームから制服に着替えて、スコアをつけ、攻撃の際の打順やランナーコーチに行く選手を確認したり、捕手が道具を装着するのを手伝うなど、マネジャーとしてチームの仕事に全力投球したが、0―10の六回コールド負けだった悔しさを選手と同じようにかみしめていた。

 「チームのみんなが仲良くて、一緒になって勝利を目指すのが楽しい」とやりがいを話し「夏まで少しでも長い時間をこの仲間と野球を楽しみたい」と言う。谷口監督は「野球人口も少なくなっている中で、初心者でも女子でも野球ができる場がうちの野球部。彼女のような選手がいることが、少しでも野球界の裾野を広げることにつなげていければ」と話していた。
(政純一郎)