「アマミヒメマルガムシ」など3種発見

学術誌に掲載された新種の水生昆虫「アマミヒメマルガムシ」=ドイツの学術誌『Deutsche Entomologische Zeitschrift』に掲載された原記載論文(Minoshima et al., 2023)より引用

新種の水生昆虫 岐阜の愛好家・上手さん
奄美野鳥の会・鳥飼さんの案内で

世界自然遺産エリアの奄美大島・金作原の河川で、水生昆虫の仲間ヒメマルガムシ属の新種が発見されドイツの学術誌に掲載された。発見したのは岐阜在住の昆虫愛好家・上手雄貴(かみてゆうき)さん(44)。奄美野鳥の会前会長の鳥飼久裕さん(63)と親交があり、発見時も一緒に採集にあたったという。学名の種名には「torikaii」の名前が付けられた。上手さんは沖縄島・慶良間諸島・久米島でも2種を発見し、研究が進んでいる水生昆虫の分野で3種が同時に記載(論文掲載)される快挙となった。

新種記載された「アマミヒメマルガムシ」(学名=Anacaena  torikaii)は、世界自然遺産登録前の2006年夏、鳥飼さんの案内で金作原の川で採集。07年久米島、15~19年にかけて沖縄島、慶良間諸島(座間味島など)で採集したものなどと併せ23年、権威あるドイツの学術誌に新種として論文が掲載された。(論文は3人による共著。上手さんは第2著者)

ヒメマルガムシ属が所属しているガムシ科は、見た目は同じコウチュウ(鞘翅)目のゲンゴロウ科やミズスマシ科に似ているが、「エンマムシ類」と近縁とされる。金作原で採集された新種は、大きさ2・1~2・5㍉でオス2匹、メス1匹。ガムシの名前の由来となっている特徴的な腹側のトゲ(漢字では「牙虫」)はない。幼虫や卵の採集はされなかったため、生態などは不明。同時に新種掲載された2種は、「オキナワヒメマルガムシ」(沖縄島、慶良間諸島に生息/体長1・9~2・6㍉)、「クメジマヒメマルガムシ」(同2・1~2・3㍉)と和名がつけられた。

奄美新聞の取材に上手さんは、「岸辺の砂利をかき回して浮いてきたものを採集したと記憶している。その時は新種とは思わず忘れていた。ガムシ科に詳しい専門家と一緒に研究したところ、琉球列島に3種も新種がいたことに驚いた。奄美・沖縄が世界自然遺産に登録されて間もないタイミングで記載となったのは、普段の活動が報われた気持ちになった。琉球列島の生物地理学的な価値を示す一例になるのではないか」と答えた。

上手さんは、17年に龍郷町内の河川で採集した水生昆虫も「アマミヨコミゾドロムシ」として同年論文掲載されている。この際も「torikaii」と学名をつけている。