第56回戦艦大和慰霊祭

3737柱の冥福と恒久平和を祈った第56回戦艦大和戦没将士慰霊祭=7日、伊仙町総合体育館

変わらぬ鎮魂・恒久平和祈り 「遺志を継ぐ国防」強い決意も
悪天で初の屋内開催

 【徳之島】第56回「戦艦大和を旗艦とする特攻艦隊戦没将士慰霊祭」(同実行委員会主催)が7日午後、伊仙町総合体育館であった。遺族や関係機関・団体代表、住民有志など約150人が参加。78年前、沖縄戦線への海上特攻で犠牲となった戦没将士ら3737柱の冥福を祈り、恒久平和への誓いも新たにした。自衛隊は「遺志を継ぐ国防」への強い決意も示した。

 戦艦大和(7万2809㌧)を旗艦とする旧日本海軍第二艦隊の計10隻は、第2次世界大戦末期の1945(昭和20)年4月6日、沖縄の米軍への海上特攻のため山口県徳山港沖を出撃。鹿児島の西南西約3㌔を南下中の7日午後、米軍機動艦隊・艦載機の猛攻を受け、大和をはじめ巡洋艦、駆逐艦など計6隻が沈没。終戦後の1968(昭和43)年、元軍人らの寄付で当時「沈没地点に最短」とされた徳之島(犬田布岬)に慰霊塔を建立。「平和希求のシンボル」にも位置付け慰霊祭を継続している。

 第56回の同日は悪天候のため、慰霊塔のある犬田布岬以外に初めて会場を移した。航空自衛隊・南西航空音楽隊(三宅崇生隊長・15人)の「軍艦行進曲」など演奏や、西犬田布婦人会の慰霊の舞い「ああ犬田布岬」で午後2時前に開式。大和の沈没時間(同23分)に合わせて黙とうを捧げた。予定した慰霊飛行は中止した。

 大久保明伊仙町長は慰霊のことばで、尊い生命を祖国に捧げた3737柱を悼みつつ、「世界に目を向けるとウクライナでは多くの尊い命が犠牲となり、人々の平穏な日常が奪われている。戦争の悲惨さと平和の尊さを深く心に刻み、戦没将士のみ霊に報いよう」。

 空自那覇基地第9航空団の鈴木繁直司令(空将補)も哀惜の念を示しつつ、北朝鮮の弾道ミサイルや中国による航空活動の活発化などは「戦後最も厳しい状況」。国家国防戦略、防衛整備計画に沿った部隊の戦力強化、日米同盟による抑止力・対処能力の向上、同志国との連携強化も挙げ、「み霊のご遺志を受け継ぎ、直面する厳しい現実に向きあい果敢に」など決意も示した。

 遺族代表には金田克明さん(67)=兵庫県三田市=の姿も。大和の主砲(砲弾管理)を担いながら艦と運命を共にした叔父・金田勇さん(当時25歳)慰霊祭への初来島をかなえた。対岸の火事ではない台湾有事への懸念など現状に、「戦争だけは起こしてはならない。みんな同じ気持ちだと思う」と話した。

 大久保町長ら当局側は、「世界平和のシンボル」の慰霊塔修繕財源のためのガバメント・クラウドファンディング計画も示し協力を呼びかけた。