任期満了に伴う県議会議員選挙は、無投票だった奄美市区(定数2)と選挙戦となった大島郡区(定数2)で、いずれも自民党の現職と新人、元職の計4人の当選が決まった。奄美市区の新人の松山さおり氏(56)、元職の永井章義氏(66)、大島郡区の現職、騎久伸一郎氏(66)、同じく現職の寿肇氏(49)の順で、今回の県議選を通して感じた選挙への思いや農林水産業や観光などを軸とした地域振興策、選挙で訴えた政策に対する取り組みなど、県政の課題や奄美の未来にどのように向き合っていくのか聞いた。
―選挙戦を振り返って。
「新人だからこそ、できる限りのことをすべきと考えた。昨年12月から住用、龍郷町など各地区を回り、2月には事務所を開いた。奄美を良くしたいと願う多くの支持者に応援していただいた。身内の理解、厚いサポートもありがたかった」
―無投票についてはどう思うか。
「有権者に自分の考えを伝えきれなかったのが少し残念。だからこそ、今後の4年間が問われると思う」
―奄美初の女性県議となったが。
「政治が男性社会であることは、市議生活を通して感じていた。しかし、女性だから、男性だからという言葉自体が、男女共同参画を目指す社会にはそぐわない。『私は私らしく』で活動できたらと思う」
―県議選立候補の理由に挙げた「子育て支援」について。
「少子高齢化は全国の課題だが、子どもを育てやすい環境をつくることは、私たちの世代が担う役割。まず、生活に密着した提言として、小中学校の部活動で必要となる島外遠征費の助成を実現したい」
―公約にある域内経済循環とは。
「例えば、住用の農作物を笠利の宿泊施設に卸すことで、地元産の食材を求める観光客の需要を満たせる。地元農業と観光の連携が、地産地消を超えた地域経済の活性につながる」
―農業振興への取り組みは。
「タンカンなど農家間で利益に差があり、若い世代が従事するためには『稼げる』ことが大事。農家の方々に耳を傾け情報を共有し、自治体との更なる一体化を目指したい」
―観光産業については。
「喫緊の課題はタクシー業界。島の足であり、高齢者を遠くまで歩かせるわけにはいかない。パートなど兼業が可能になれば、女性の登用も増やせると思う」
―市政から県政へと活躍の場が変わるが、今後、県議として果たす役割は。
「地域が発展することで県が発展すると思うが、インフラ整備された奄美に今一番必要なのは、島の人たちが楽しい生活を送ること。今回の選挙では『聞き役』に徹する大切さを知った。人の痛みに大きい小さいはない。県に対しては、子育てや女性の健康問題など実体験を踏まえた提言、そして、奄美に住む人たちの『声』を届けていきたい」
(聞き手・西直人)
(まつやま・さおり) 大阪成蹊女子短大児童教育学科卒。2015年~22年まで2期7年奄美市議。趣味は、ウォーキングのほか料理関連の動画鑑賞で、最近は「大根もち」に挑戦。好きな言葉にシマのことわざ「ムンヌ知りハテヤネン」(物事の学びに際限はない)を挙げ、「娘、息子から教わることは多い」と笑顔で話す。一男一女。56歳。