新たに公表された「奄美群島振興開発総合調査」(写真は概要版)
県離島振興課はこのほど、2024年3月末で期限切れを迎える奄美群島振興開発特別措置法の改正を控え、新たな振興開発の方向や方策を示す「奄美群島振興開発総合調査」を作成し、公表した。現状や課題のほか、報告書では世界自然遺産登録を生かした沖縄との連携や定住促進といった施策を提言し、実現には法改正や交付金の対象追加・拡充が必要だと訴えた。
改正を前に、群島内の社会・経済の現状や課題を洗い出し、今後の振興開発の方向や方策を明らかにすることが目的。県庁内に総合調査委員会などを立ち上げ、2022年から市町村や関連団体、民間有識者らを対象にした意向調査を行い、アンケート調査、パブリックコメントなどを実施して300㌻を超える報告書(概要版あり)にまとめた。
報告書では、奄美群島には地理的条件や自然的条件に起因する経済格差などが未だに存在するとして、▽世界自然遺産登録を契機とした自然環境の保全・活用及び環境型文化の継承▽沖縄や屋久島と連携した観光立国への貢献▽デジタル技術の革新や地方回帰の潮流の好機を振興開発に生かす―などをこれからの目指すべき方向として示した。
開発振興の施策では、「定住を促進するための方策」「自然環境の保全・利用の両立と文化の継承」「稼ぐ力の向上」「条件不利性の改善」などの6項目を提案。定住促進では、「産業の振興」と「移住交流の促進」を柱に、金融の円滑化、空き家改修など移住者を受け入れやすい環境づくり、サポート体制の充実、移住情報の発信などを盛り込んだ。
ただ、沖縄との連携へは特措法条文の改正が必要になる。定住促進などのソフト分野の推進には振興交付金の拡充が欠かせない。報告書では「実現には県や市町村の考え方を理解してもらった上で、国の制度や予算の検討を進めてもらう必要がある」と強調。同課は「しっかりと働きかけていきたい」と話した。
報告書は後日、国の奄美群島振興開発審議会へ提出する。詳しい内容は県のホームページで閲覧できる。