シマ唄をうたう西和美さん(撮影・越間誠さん)=提供写真
【東京】奄美市名瀬で「郷土料理かずみ」を経営する唄者・西和美さん。全国各地から、その味と歌声を目当てに多くの人々が店を訪れる。彼女の生きざまを通じて奄美を知る著書『「かずみ」の時代』をこのほど、鹿児島大学の梁川英俊さんが手懸けた。注目の書籍はこの8、9月の出版予定。今月6日から予約が始まり、早くも数百冊に達しているという。
著者は島唄研究者で知られる鹿児島大学法文学部教授の梁川さん。「築地俊造さんの自伝本の出版を準備していたときに、島唄研究家の小川学夫先生と『かずみ』の常連から依頼されて準備を始め、5年間、和美さんにインタビューした時間は数十時間に及ぶ」と語る。奄美や沖縄、関東や関西で関係者の取材も敢行。 昨年8月、「和美さんも80歳を過ぎたので、いつまでも時間をかけてはいられない」と一念発起し、半年間かけて書き上げた渾身=こんしん=の力作だ。
戦中の奄美、米軍占領時代に密航の最前線となった口之島、集団就職のメッカで紡績の中心地であった愛知県一宮、多くの奄美出身者が集い、リトル奄美と呼ばれた戦後の尼崎、そして築地さんの日本一に沸く奄美などが舞台。和美さんの人生を追いながら、同時代の新聞や雑誌、さまざまな人たちの証言などを交えつつ描かれている。梁川さんは「単に和美さんの評伝というだけにとどまらず、奄美の風俗史、島唄史、島唄研究書などさまざまな側面から興味を持っていただける本」だと自負している。
関係者によれば、原稿を読んだ西和美さんからは「泣けて泣けて仕方がなかった」との感想が寄せられている。南方新社から出される書籍は税込みで2200円、300㌻ほどになる見込み。予約者に限り9冊までの購入は1割引、10冊以上は2割引になる(送料無料)。氏名、住所、予約冊数を次のメールアドレスまで知らせてほしいとのこと。支払いは刊行後となる。 yanagawa@leh.kagoshima-u.ac.jp