障がい者向けエコツアー

ドイツからの観光で参加した車いすの参加者も

 

 

車いすでも堪能
油井岳起点に世界自然遺産エリアへ
奄美瀬戸内ロータリー

 

 不自由さゆえに世界自然遺産の豊かさを体験することが難しい障がい者を対象に16日、自然ガイドツアーがあった。企画したのは奄美瀬戸内ロータリークラブ(町田慶太会長、会員14人)。大島海峡の多島美が一望できる瀬戸内町・油井岳展望台に関係者24人が集合、公園内に移植された希少種の説明を受けた後、車に分乗して林道最深部へ移動した。

 「障がい者向けエコツアー」は奄美でも初めての試み(町田会長)ということで、車いすに乗った2人を含む要介護者、聴覚障がい者など6人が参加した。

 案内したのは奄美群島認定ガイドの國宗弓穂さんと佐藤幸雄さんの2人。國宗さんが「このエリアは古仁屋から一番近い自然。第2種特別保護区域になり(生息域を広げている)アマミノクロウサギがすみ、希少植物の宝庫」と説明し、アマミテンナンショウやアマミリンドウなどを見つけると、花の時期や形、色などパネルを使って説明した。

 その後は、特別保護区域の林道最深部に車で入り坂道を上るルートを取ったため、杖をつくなどして参加していた人は途中から車に乗っての移動を余儀なくされた。しかし、口々に「こんな森の深いところに来たことはない。空気がきれいで気持ちいい。鳥の鳴き声も心地いい」と話した。

 一眼レフカメラで植物を撮影していた山下浩一(ひろかず)さん(58)は聴覚障がいがあるため、ガイドされた内容は同町社会福祉協議会の手話通訳、榮益宏さんが手話を使って説明した。山下さんは、普段はカツオ船に乗って一本釣りをしているという。「コロナ禍で加工用の需要が減り収入が減って大変だった」様子などを明るい表情で説明した。

 ドイツに住んで30年、妻もドイツ人だという渡辺富士男さん(64)は足の不自由な長男(29)と、ドイツで介護職をしているといういとこ2人を伴って参加した。「娘が沖縄の大学にいるので石垣島などには5回来ている。奄美に来るにあたり、宿泊施設のリサーチをしたが、使っている電動車いすの充電など(電圧の違いがあり)設備の問題で宿泊施設の選択が難しかった」という。同町で障がい者向けダイビングに対応している「『ゼログラフィティ清水』の設備は世界的にみても素晴らしい」と話した。

 ツアーは約2時間で終了したが、「息子は自然が大好き。しばらく森から出てこないだろう。こんなに植物の種類が豊富な地域は初めてだと驚いていた」(渡辺さん)とゆっくり森の自然を楽しんでいた。  

 同ロータリークラブでは、同様のツアーを定期的に行うか検討するという。