「平井Red」面積5・9㌶に拡大

早熟性のため着色の良好さが秀でている「平井Red」(提供写真)

苗木、JA部会員に供給
タンカン早生新品種

 奄美市名瀬の平井果樹園が品種登録を出願し、2019年11月に正式に品種登録されたタンカンの早生新品種「平井Red(レッド)」=垂水1号の枝変わり=。同果樹園と許諾契約を交わしたJAあまみ大島事業本部生産部会連絡協議会果樹部会(大海昌平会長)が窓口となり、部会員に要件に沿って苗木を供給しているが、植栽面積は22年度末で5・9㌶まで拡大。これまでの品質比較で平井Redの早熟性が明らかなことが確認されており、関係機関は果樹農業の切り札として期待している。

 県大島支庁農政普及課によると、1月に出荷可能な平井Redの果実は、1月中旬で既に果芯(かしん)の開きと減酸が認められることから、熟度が早い早生の特徴も再認識できたという。晩秋期の異なる気象条件下での品質比較も行われており、▽気象条件に関係なく、垂水1号に比べ平井Redの着色の良好さは秀でている▽早熟性という特性に加えて、剥離性の良さも大きな特徴―などが考察された。

 苗木の配布に当たっては、穂木採集用母樹は平井果樹園で管理しており、同園から提供された穂木を本土の苗木業者が種苗生産。20年からJA部会員への苗木供給が行われているが、JAでは新植や改植事業を導入するとともに、「垂水1号とのすみ分けが図れるよう混植をしない」「1回あたり10㌃以上、50本以上の苗木植栽が可能」を要件に配布。これが守られているかは各市町村の担当課がGIS(地理情報システム)を活用して栽培状況を把握している。

 平井Redの植栽に取り組んでいるのは中核的な農家(奄美大島の21戸)で、面積は21年度末3㌶超、22年度末には6㌶近くまで倍増した。順調に栽培が進めば、24年度にも収穫が見込まれている。事業が採択されたら今後、販売戦略も検討していく。

 奄美大島のかんきつ生産は平井Redが軌道に乗れば、年末の需要期(お歳暮)に出荷が可能な「津之輝(つのかがやき)」から始まり、平井Redを挟みタンカンと、地域全体で12月から3月までの「かんきつリレー出荷体系」が構築できる。同農政普及課の川越尚樹課長は「4カ月にわたってかんきつの出荷ができるようになれば労力分散や規模拡大が可能となる。生産者の所得向上が期待でき、三つの品種のバランスを整えながら実現を目指したい」と語った。