泥染めの可能性探る反物特別展示

奄美への思いなどを語る、左から金井志人さん、泉二啓太さん、柳晋哉さん

詰め掛けた来場者に説明する泉二啓太さん(右上は反物を解説する様子)

「銀座もとじ」でイベントにぎやかに開催

 【東京】銀座で本場大島紬の専門店を展開する「銀座もとじ」(泉二(もとじ)啓太社長)がこのほど、泥染めの可能性を探るイベントを開催した。織と染色のスペシャリストが参加し、解説していた。4月14日のレセプションでは、黒糖焼酎や奄美の食材を使ったフードも振る舞われ、来場者は奄美を堪能していた。

 イベントは、日本染織の可能性を探る取り組み「HIRAKIproject」の第2弾。泉二社長が企画し、染色の金井志人さん、織の柳晋哉さんというスペシャリストが参加した。「泥中(でいちゅう)の布(ぎん)」と銘打たれたものは、2月に奄美の金井工芸ギャラリーで、大島紬の職人ら制作者を対象に開催された。今回は消費者らを対象にして14~16日まで行われ、来場者でにぎわった。

 「銀座もとじ和織・和染」(中央区銀座4-8-12)には、下染めにシャリンバイ(テーチ木)のほか、ヤナギ、スオウ(蘇芳)、インド藍、フクギを用いて染め上げた5反が特別展示された。泥染めの新たな可能性を探った反物が、来場者を異なった表情で出迎えていた。

 斬新な試みを次々と展開している気鋭の染色家・金井さんが共通の友人を介して、「民藝運動の父」と呼ばれた、柳宗悦の系譜を継ぐ染織作家・柳さんと出会った。そして共に「銀座もとじ」と縁があったことが発端となった。
「伝統を守る上で、いろんなやり方があっていい」(金井さん)。「奄美が好きすぎて、何かしたいと思った」(柳さん)。「自然豊かな奄美をもっと生かす形で染織しました。固定概念を払拭したかった」(泉二さん)。

 生産反数が「ピーク時の1%」とされる大島紬の現状に「何かをしなければ」との思いで一致、伝統に違った視点から注視した。その後、3人は展示された反物を解説。来場者は、泥染めに未知の化学反応を起こす、新たな可能性を求めたチャレンジに聞き入っていた。