「虹の丘」 居宅面会を再開

いち早く居宅面会に踏み切った老健施設「虹の丘」

面会禁止の期間中、入所者を癒したセラピー猫の「将軍」

奄美市の老健施設 クラスターの経験生かす
3月から 直接触れ合い症状改善も

 「ガラス越しの面会から肌のぬくもりの伝わる触れ合いへ」――。リスクを抱えながらも、大きく新型コロナウイルスと向き合う決意をした高齢者施設がある。「クラスターの経験が、今回の決断に生かせるはず」と3月から、高齢者が暮らす居宅スペースでの面会再開に踏み切った。認知症の入所者は、家族と直接触れ合うことで、症状の改善がみられるようになったという。

 奄美市名瀬小宿の介護老人保健施設「虹の丘」(喜入厚施設長、入所者90人)は3月20日から、居宅内面会を再開した。1回の面会時間を15分としながらも、時間帯は問わず、面会人数の制限もしなかった。土日祝日も受け入れた。

 コロナ禍にあって同施設では、2020年4月に完全面会禁止の措置をとった。その後、ウェブ会議ツールでの面会、ガラス越しにスピーカーで話す方法などを試したが、高齢者の反応は「どこから声が聞こえるのかわからない」「相手が誰かわからない」と不評で、反応してくれない人もいたという。

 「制限中に亡くなる人もいて大変つらかった」と事務長の萩原美穂さんは当時を振り返った。厚生労働省から面会再開の再開・推進(1月31日付事務連絡)がされ、隣接する大島郡医師会病院の感染対策委員会でも緩和方針が示された。「ここは生活とリハビリの場なので、リスクを覚悟で踏み込んだ対応をとった」(萩原さん)という。 

 介護支援専門員の森悦朗さんは「洗濯物の交換だけに3年間通った家族もいる。その間、認知症の症状が日に日に進んでいく入所者もいた」と話す。3月に面会を再開すると、その症状が改善の方向をみせたという。「まるで反応が違った。制限時は相手が誰かわからない様子だったが、直接会って触れることで、認知機能を取り戻していく人もいた」と森さん。

 同施設では、昨年8月、入所者36人、通所者13人、職員10人以上のクラスターが発生。通所リハビリを2週間休止せざるを得なかった。

 「職員を欠く中、隔離措置をとり対応した。個室隔離、フロア隔離とレッドゾーンは広がっていった」と森さんは苦闘ぶりを語った。その上で、「(居宅面会再開で)希望の多い食事介助などは、入所者との距離が近くなりすぎるため許可していない。一番の感染経路となる職員の健康管理もアンテナを高くはった。クラスターの経験値が生かせると思う」と語った。