「幸せ感じる観光地を」

奄美の観光振興をテーマに基調講演や意見交換を行った「かごしま活性化フォーラム」

ポストコロナ奄美観光へ 鹿児島財務事務所
活性化フォーラム 人材不足解消労働環境改善必要

 鹿児島財務事務所による「第6回かごしま活性化フォーラム」が17日、奄美市名瀬の同事務所名瀬出張所であった。㈱日本総合研究所(日本総研、本社・東京都)の山田英司理事(53)が、「ポストコロナ時代における社会的・経済的課題解決に向けた処方箋~離島地域の観光振興事情に関連して」と題し基調講演。コロナ禍から復調の兆しがみられる奄美観光について、「観光客のためだけではなく、地域住民が幸せを感じられる観光地づくりが求められる。そのために人とお金をどう結び付けていくか。持続可能な観光地を目指すことが大切」などと指摘した。

 同フォーラムは同財務事務所が2018年から、地域のリーダーらと鹿児島の活性化などについて意見交換することを目的に毎年開催。過去5回は鹿児島市で開いており、同市以外での開催は初めて。オンラインを含め企業経営者や経済団体、金融機関、行政関係者ら約30人が出席した。

 冒頭あいさつに立った同財務事務所の増田繁胤所長は「エネルギー価格の高騰など先行きの不透明感はあるが、主要産業である観光では、インバウンドの復活が景況感の上昇に寄与すると期待している」などと、アフターコロナの地域経済を観光が引っ張るとの見方を示した。

 日本総研の山田理事は、訪日外国人が増加傾向にあるなど全国的に観光分野で労働需要が増えている一方、コロナ禍による雇用調整後、離職者が戻らないなど人材不足が続いている現状に触れ、「人材確保には、労働時間や給与水準の改善が必要。労働者のやりがい搾取とならないよう、DX活用などによる生産性の向上が求められている」などと指摘した。

 また、奄美など離島地域で期待される観光の在り方について、「観光を起点として、産業振興や雇用拡大、定住人口増加、インフラ整備などの好循環を形成することが理想」とし、国や県、地元自治体などの支援を受けつつ、自主的な財源や人材を持続的に確保するための取り組みを求めた。

 そのうえで、持続可能な観光について▽地域の持続性に寄与▽地域の人々の幸福感の担保▽観光従事者の幸福感の担保▽企業の適切な資金確保が必要とし、「観光だけが独立しているのではなく、地域の歴史文化や公共交通、インフラなどにもつながっていく。最終的に、地域の人たちがどれだけ自分ごととして観光を捉えられるかが大切になってくる」などと語った。

 基調講演後、出席者らはそれぞれの立場から奄美の観光振興や鹿児島の経済活性化などについて意見交換した。