沖永良部産 完全人工ウナギ試食

沖永良部産の完全人工ウナギを試食する新日本科学の永田良一社長(左奥)と前登志朗町長(右)(和泊町)


試食会で振る舞われたうな重など(和泊町)

新日本科学が研究 新たな可能性広がる

 【沖永良部】和泊町にシラスウナギの人工生産研究施設を持つ新日本科学(本社、鹿児島市)は18日、和泊町の飲食店で、研究施設で育てたウナギの試食会を開いた。沖永良部島産の完全人工ウナギを使ったうな重やう巻き、肝吸いなどが振る舞われ、参加者らは「臭みがなくておいしい」「島でウナギが作れるなんて信じられない」と喜んだ。

 現在の養鰻業は天然のシラスウナギが使われているが、不漁の年は価格が高騰することや近年では漁獲量の減少が問題となっていた。

 同社は、日本の食文化や海洋資源の保全に貢献しようと、2014年に人工ウナギの生産研究を開始。19年から海水を用いた研究を行うため和泊町伊延港近くに研究拠点施設を整備し、20年にシラスウナギの生産に成功した。

 21年には466匹の人工ウナギを生産。22年には280匹を生産し、そのうち76匹を親ウナギとして飼育している。26年度には年間10万匹を生産できる体制を目指す。研究と設備にこれまで7億8800万円の費用をかけた。

 和泊町の「味処ふるさと」で開かれた試食会には、同社と地元の関係者ら15人が参加。今回、研究施設でふ化したシラスウナギを約1年半飼育して食用可能な大きさまで成長させた人工ウナギを使った。

 調理した店主の林次男さんは「活きが良く脂が乗っていた。大きさがさまざまだったので工夫しながら調理した」。沖永良部島漁協の東善一郎組合長は「柔らかくて味も良い」と話した。 

 和泊町の前登志朗町長は「完全に沖永良部で生産されていることに感動した。町の可能性が広がった」と期待を込めた。

 同社の永田良一会長兼社長は「きれいな海水で育ったウナギは本当においしい。大量生産の基本ができたので、今後は島のために養鰻場や加工場を作り、和泊町のウナギを日本全国や世界の人に食べてもらいたい」と話した。