龍郷町、呉服大手やまととSAP協定調印

SAP協定に調印した矢嶋孝行やまと社長(右)と竹田泰典町長(龍郷町役場第一会議室)

大島紬の復活へ歴史・文化発信も

 全国に着物専門店78店舗を展開する呉服販売大手㈱やまと(矢嶋孝行社長、本社・東京)と龍郷町は19日、大島紬を縁とした公民連携協定「ソーシャル・アクション・パートナー協定 T‐SAP」を結び調印式を行った。今後同社の持つ店舗網を生かした販売促進やイベントの開催、奄美諸島の歴史・文化の魅力発信に協力体制をつなぐ。

 SAP協定とは、地域の社会的課題を公民で解決していくもの。基幹産業の大島紬の衰退に悩む同町に、1999年から奄美大島島内での研修を続けてきた同社が申し入れ締結に至った。

 協定の目的には、①大島紬の振興および魅力の発信②龍郷町の歴史・文化の発信③多様性社会(ダイバーシティ)の実現―が盛り込まれている。

 18日から店長ら36人を伴い研修に訪れていた矢嶋社長は「大島紬の歴史も、島の歴史も改めて学ぶ機会となった。6~8月の3カ月、大島紬の販売促進に加え、米軍統治下の歴史なども店頭で発信していく」と調印後最初の取り組みについて語った。

 同社は本社のある渋谷区で、障がい者の20歳の集いに着物を作る「ハタチの記念撮影会」などを実施。そうした活動もあって、昨年は同区とSAP協定を結んだ。同町との協定に明記されたダイバーシティへの取り組みについても、人種・宗教などの壁を超えるイベントなどが期待される。

 竹田泰典町長は「こうした協定をつながりの深い企業と締結できることは心強い」と語った。

 矢嶋社長は「この仕事(大島紬)だけで生活できる体系をつくらなければならない。販売店、行政、産地が真剣に話す必要がある」と統括した。

 同社は1917年創業。新型コロナウイルス感染症前には総売り上げ約200憶円を超え、年間20万人以上の来店数を誇る。2018年には織工養成所の設立に関わりプロ織工30人を輩出している。今回の研修では、本場奄美大島紬協同組合で製造工程、奄美博物館で戦後の歴史などを学んだ。