防災行政の空白続く

奄美市名瀬浜里町では防災行政無線の不具合で情報がスピーカーから流れず、自治会のマイク放送もできない事態が続いている

 

 

無線受送信の部品故障 修繕見通し立たず 奄美市名瀬浜里町
台風接近、北朝鮮ミサイル 「情報放送されず不安」

 

 

 公営住宅の建物が複数建ち並び、新興住宅地の奄美市名瀬浜里町(約600世帯)。80歳以上が約100人と住宅入居者を中心に高齢化が進む中、住民の生命に関わる防災行政の空白が続いている。無線で伝達される情報が、受送信の役割を果たす機械の故障で地域内に放送されていないためだ。町自治会(泉直樹会長)は市に改善を要請しているものの、回収された部品の修繕の見通しは立っていない。

 防災行政無線による情報は、同町では県営住宅1号棟の屋上にあるスピーカーを通して放送される。自治会の集会施設内には放送機材があり、受話器型のマイクを使い、泉会長(64)が奄美市からの行政広報や自治会の行事案内などに活用している。

 泉会長によると、4月上旬、マイクで放送しようとしたところ、スイッチを押しても点滅せず使用できない状態に。防災行政無線放送もスピーカーから音が流れず、現在は午後6時となっている子どもたちに帰宅時間を知らせる、午後8時の火の用心といった毎日の放送も途絶えた。

 泉会長は休日明けの月曜だった同月10日、市総務課防災危機管理室に防災行政無線が利用(使用)できない状態にあることを伝えるとともに、早急に改善を要請。その後も状況は変わらず、1か月後の5月12日、再度要請した。泉会長は「間もなく2か月なのに一向に改善の気配がない。台風接近に伴う避難呼び掛けが必要になったら、どう周知したらいいのか。北朝鮮のミサイル発射で『Jアラート』(避難呼び掛けの全国瞬時警報システム)の対象になったとしても浜里は放送されないことになる。住民にとって防災情報があることで、自らの命を守る行動につながるだけにこのまま空白が続くと、安心して生活できない」と不安を強調するとともに、「早急に対策を進めてほしいのに行政から十分な説明がない。こちらから要請しても行政からは反応がなく、一方通行のよう」と不信感を募らせている。

 同室によると、防災行政無線を通した情報伝達方法はスピーカーの下にボックスがあり、その中に無線を受信し音にして送信する機械がある。機械の故障によるもので、修繕が必要として請け負った地元業者が部品を回収、島外の大手メーカーに送っているが、半導体不足などもあり部品が修繕できる時期の見通しは立っていない。集会施設内の放送機材を使ったマイク放送ができないのも、この故障が関係している。

 稲田一史室長は「自治会長には昨日(5月30日)、状況を説明した。メーカーで部品修繕の見通しが立てば早急に対応したい。その間は防災情報を伝える代替手段を活用していただきたい。緊急時には消防とも協力しながら災害に関する情報を広報車などによって直接、住民に伝えていく」と説明する。テレビ、あまみエフエムなどのラジオ、奄美市の公式LINEなどSNS、緊急時はエリアメールなどで防災情報を入手できるが、高齢者など「災害弱者」への浸透のためにも防災情報が地域内に放送される方法の復旧が待たれている。同様の防災行政無線の不具合は、市内では長浜地区、住用町城地区でも起きているという。