アマミホシゾラフグ今年も繁殖を確認

繁殖用として確認された産卵床(5月31日、興克樹会長撮影)

くわえた貝殻で産卵床を装飾するオスのアマミホシゾラフグ(興会長撮影)

生物多様性 奄美の海のシンボル
海洋生物研・興会長撮影

 2014年に新種として発表された、生物多様性の島の海のシンボルとも言える「アマミホシゾラフグ」。奄美大島南部・大島海峡での繁殖を奄美海洋生物研究会(興克樹会長)が確認、完成した産卵床などを撮影した。
 興会長によると、アマミホシゾラフグの産卵・繁殖シーズンは4~7月。興会長は、5月28日から大島海峡、瀬戸内町清水=せいすい=沖約200㍍・水深25㍍の砂地で繁殖観察を開始。同30日に産卵床(直径約2㍍)が完成し、翌日の31日早朝(午前6時50分頃)に産卵を確認、写真撮影した。

 周辺には別のオス個体の産卵床も完成していたが、「産卵は見られなかった。6月1日以降は台風2号接近のため観察は行っていない。卵は5日後に孵化=ふか=するまでオスが守る」と興会長。観察地周辺では、昨年は産卵床が9床と多く見られたが、今年は少ない(観察範囲で)という。

 興会長によると、アマミホシゾラフグは沖縄島でも生息が確認されているが、産卵床確認は奄美大島(大島海峡、笠利湾)のみ。保全活動として地元のダイビング事業者(瀬戸内町海を守る会)が毎年、産卵床の確認を行い、観察ルールに基づいたガイドツアーを実施している。多くのダイバーが観察のため訪れているなか、興会長は「とても珍しい特異な地域資源であり、環境の多様性を示す海のシンボル。いつまでも産卵・繁殖ができるよう見守ってほしい」と呼び掛けるとともに、法的には捕獲が規制されていないことから「陸上の希少な生き物同様、条例などによって捕獲を禁じ、取れた場合はリリースを徹底するなど保護に向けた整備を進める必要があるのではないか」と提案している。

 メモ

 アマミホシゾラフグ 体長約10㌢。星空のような斑点模様から14年に名前が付けられた。シッポウフグ属の新種で、15年には「世界の新種10」に選ばれた。メスへ快適な産卵床を提供する求愛行動として、オスが円形模様を描く。