放送大学公開講座 鹿大・河合教授が報告

アマミノクロウサギ、マガキガイの保全について講演する河合渓教授(4日、県立奄美図書館)

クロウサギによるタンカン樹被害額が増加
マガキガイ漁獲量が激減

放送大学鹿児島学習センター公開講座が4日、奄美市名瀬の県立奄美図書館で開かれた。鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの河合渓教授(59)が「奄美群島の自然と人」と題し講話。アマミノクロウサギによる食害、減少傾向の海産資源トビンニャ(マガキガイ)について報告し、それぞれの対策とともに、「人と自然の共存」の在り方を解説した。

河合教授はアマミノクロウサギについて、個体数増加に伴う、生息域の拡大による農作物被害を説明。奄美大島でのタンカン樹の被害金額が、2017年の76万円を皮切りに19年に510万円と増加。特別天然記念物の指定を理由に捕獲ができないことから、高さ、網目の大きさ、折り返しを考慮した侵入防止柵や電気柵など、具体策が確立しつつあると報告した。

マガキガイについては、名瀬・奄美漁協などへの調査によると19~20年以降、漁獲量が激減していると報告。与論でも現在、流通を止めるなど奄美群島全体で減少傾向にあるとし、▽生態系の均衡が崩れる▽漁協などの収入減▽伝統食材の消滅―などを指摘。原因解明とともに、貝の湾曲部分(湾入の有無)を目安に成熟した個体から漁獲するなど、科学的根拠による資源管理の重要性を伝えた。

質疑応答では、増加傾向のクロウサギについて今後、各集落に現れるなど、より身近な存在になると推察。特別天然記念物のニホンカモシカが一部地域で捕獲されている事例を挙げ、「今から島全体で新たな保全方法を考え、取り組むべき課題」と指摘した。