鹿大島嶼研、ブックレット発行

新しく発行されたブックレットをPRする鹿大国際島嶼教育研究センター奄美分室の山本宗立准教授(左)と吉川晟弘特任研究員(7日、奄美新聞社で)

離島漁業経営振興へ提言も

 鹿児島大学国際島嶼=とうしょ=教育研究センターは、「奄美群島の水産業の現状と未来」「鹿児島県薩摩川内甑列島の自然と地質学的魅力」と題したブックレット(小冊子)2冊を発行した。水産業では群島内漁協の取り組みなどを紹介するとともに、離島漁業の経営振興に向けた提言をまとめている。

 島嶼に関する研究者の研究成果を高校生など学生でも理解できるよう分かりやすく地元に還元することを目的に、2015年3月から毎年2冊ずつブックレットを発行。今回(23年3月発行)で21冊目と22冊目となった。

 発行された2冊のうち水産業の著者は、同大水産学部の鳥居亨司=とりいたかし=准教授(専門は水産経済学)。漁協の取り組みでは、「人工漁礁を活用した漁業振興の試み」(沖永良部島漁協)、「漁業者と漁協が一体となった漁業経営振興への挑戦」(奄美漁協)、「民間企業と一緒になった販路確保」(与論町漁協)、「企業誘致による経営振興」(瀬戸内漁協)を紹介している。

 このうち低酸素ウルトラファインバブル海水を使った品質保持の取り組みも進めている奄美漁協については、成果として「品質保持の徹底、B社(沖縄県内の量販店)との相対取引と規模拡大により、市況に左右されない安定的な漁業経営を実現できるようになった」と成果を挙げる。漁業者と漁協職員との関係については、「漁業者は漁協職員の取り組みや判断を支持している」として、販売事業や指導事業が漁業経営の向上に寄与しており、「漁協本来の役割と機能が発揮されているとみなすことができる」と評価している。

 こうした現状を踏まえて離島漁業を維持するための方策を提言。①漁協の組織強化②新技術の導入と政策的支援③異業種連携の推進④島内市場の掘り起こし⑤離島地域での事業展開を望む企業の誘致―を求めている。

 奄美分室の山本宗立准教授は「世界自然遺産登録により国内外からの観光客が増えているが、島内に宿泊する観光客は地元の特徴ある水産物を味わいたいと思っている。収益の面から島外へ出荷されているだけに、地元での消費促進や未利用魚の活用、適切な資源管理などを考える一助として役立ててもらえれば」と語った。

 ブックレットの定価は「奄美群島の水産業の現状と未来」が900円(税抜き)、「鹿児島県薩摩川内甑列島の自然と地質学的魅力」が700円(同)。発行所は北斗書房。購入は書名でインターネット検索か、書店でも購入できる。