金作原に「バイオトイレ」

バイオトイレの完成を祝いテープカットを行う関係者ら

微生物による分解作用でし尿処理するバイオトイレ

阪急交通社の寄付などで整備 テープカットで完成祝う
利用はガイド案内必要

 奄美市は、希少動植物が多く生息する観光スポット「金作原(国有林)」手前の林道脇市有地に「環境保全型トイレ(バイオトイレ)」1基と太陽光発電パネルを設置した。9日、設置場所で落成式があり、施設整備費の一部を寄付した㈱阪急交通社の関係者らも出席、テープカットで完成を祝った。トイレは12日から、散策などで金作原を訪れる観光客らの緊急用トイレとして利用される。

 トイレが設置されたのは、同市名瀬知名瀬から金作原に向かう林道の三差路付近で、奄美群島国立公園第2種特別地域内。トイレは、タンク内に杉チップが入っており、微生物の分解作用で、し尿処理を行う。杉チップのかくはん、加熱に必要な電力供給のため、トイレ裏には太陽光パネルも設置している。

 市世界自然遺産課によると、整備費は約1300万円で、うち500万円は阪急交通公社からの企業版ふるさと納税による寄付金。昨年12月から現地で整備を開始、資材調達の遅れなどもあったが、5月にようやく完成した。

 落成式には、安田壮平市長のほか、阪急交通社の能上尚久専務、環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部慎太郎所長らが出席。安田市長は「世界自然遺産登録後、金作原を訪れる観光客は増加しているが、周辺にはトイレがなく利用者のニーズに十分応えられていなかった。バイオトイレ設置は利用者の安心で快適な観光と環境への配慮の両立につながる」などとあいさつ。設置を喜び、寄付を行った同社に感謝状を贈った。

 同社は、これまでにも全国各地で同様のバイオトイレ整備活動を展開。07年に屋久島、13年に小笠原父島(東京都)、19年に釧路湿原(北海道)といった世界自然遺産登録地を支援。奄美市が7か所目となった。

 式典前に金作原散策を体験した能上専務は「トイレが金作原を楽しむ観光客らの手助けになれればうれしい。世界自然遺産となった奄美大島の豊かな自然を多くの人に体験してもらいたい」と話した。

 市世界自然遺産課によると、バイオトイレが1日に処理可能な使用回数は20回ほど。トイレの入り口には、常時カギがかかっており、使用には金作原を利用する認定エコツアーガイドの案内が必要。市は、トイレの管理運用にエコツアーガイドの協力を得る方針で、利用開始する12日までに、登録したガイド約20人に、入り口のカギを貸与する。

 同課は「緊急避難的な利用に限って使用してもらいたい。来訪時にはこれまで通り、事前にトイレを済ますなど、利用マナーを守るよう心掛けてほしい」とし、これまで通り、名瀬運動公園内などのトイレ利用を呼び掛けている。