屋久島・奄美発の環境文化

無料の電子書籍・電子ブックとして発行された『屋久島・奄美発 世界自然遺産の里と環境文化』の表紙

体験し学べる里にスポットも
鹿大研究会、電子書籍で発行

 鹿児島大学鹿児島環境学研究会は、公益財団法人屋久島環境文化財団との共同編集で、電子書籍『屋久島・奄美発 世界自然遺産の里と環境文化』を発行した。体験し学べるフィールドとしての里(集落)にもスポットをあてており、選出したモデルコースをエコツアーなどでの活用を期待している。

 書籍は、第1部座談会「屋久島・奄美の環境文化を考える」、第2部「屋久島・奄美それぞれの環境文化」、第3部「屋久島・奄美 環境文化の里をめぐる」―の3部構成。このうち里については、両地域で「里のエコツアー」を積極的に進めるために組織された屋久島里めぐり推進協議会と奄美・屋久島まち歩き連絡協議会が協力している。

 モデルコースとして紹介しているのは、奄美で▽大和村国直「白砂の国直海岸とフクギ並木。夕焼けフェスとふくぎナイトを楽しもう」▽瀬戸内町古仁屋「くにゃをわーきゃと楽しもうでぃ!!」▽宇検村湯湾「焼内湾と奄美大島最高峰湯湾岳に囲まれたケンムンの里」▽奄美市住用町市「市(いち)集落の歴史文化に触れ、そして自然を歩こう!!」▽龍郷町秋名「450年以上継承される伝統行事と島の田園風景が残る集落」▽喜界町阿伝「喜界島を、よんよ~り(ゆっくり)集落めぐり」▽徳之島町金見「まるごと国立公園!海と森と人々が共存する体験型集落」―の7か所。

 それぞれの里内のモデルコースの特徴を写真、地図を掲載して分かりやすく伝えている。連絡先の記載もあり、問い合わせに役立ちそう。世界自然遺産登録地以外の喜界島、沖永良部島、与論島に関しては「環境文化型国立公園」の枠組みによってつなぐことができるが、その一つ喜界島の阿伝で紹介しているのが伝説の巨岩群、戦前からある古道、岩倉市郎顕彰碑、旧家の屋敷跡など。今なお残るサンゴ石灰岩で積まれた石垣の風景を楽しめる。

 環境文化の定義については「地域や自然から糧を得ながら、地域の自然との関わりの中で長年にわたり育んできた生活や文化」としているが、座談会では「自然環境だけではなく、歴史的環境や生態学的環境等を含め、広い視座から環境を捉えていく必要がある」との意見も出ている。