沖縄も追加・対象に

奄振交付金拡充で県
国に要望 運賃割引、輸送コスト支援
介護帰省者の割引も追加検討

 

 

 奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)は今年度末(2024年3月末)に期限切れを迎えるが、これを前に県は総合調査報告書を作成し、国の審議会に調査結果を報告した。法延長の理論付けとなる報告書では奄振交付金の拡充の必要性も示しており、航空・航路の運賃割引で沖縄路線の追加を求めているほか、介護帰省者の検討も挙げている。また、農林水産物の輸送コスト支援では沖縄への移出も補助対象とするよう国に要望している。

 奄振交付金の活用と拡充は開会中の県議会一般質問で取り上げられ、総合調査報告書の内容を踏まえて総合政策部の西正智・地域政策総括監が答弁した。

 航空路線では、両地域間(奄美と沖縄)を結ぶ離島航空路が運航しているものの、昨年7月、コロナ禍で旅客が減少し厳しい経営環境が続いていたことから、航空会社が路線を見直し。コロナ禍前から収支が悪化していた奄美群島と那覇とを結ぶ直行便について、奄美大島発の便を与論島経由とするなどの見直しがされた。

 答弁によると、県は両地域間の交流人口の拡大を図り直行便の再開や充実につなげるため、航空路の運賃軽減などを行っている。総合調査の報告書でも「鹿児島本土との間に適用されている奄美群島の住民割引の対象地に、沖縄を追加する制度拡充を検討する」としている。

 運賃割引は群島住民に加え、19年度からは群島出身の学生なども「準住民」として対象となった。さらに親などの介護に伴う帰省者まで拡充するかは「奄美群島では65歳以上の人口や高齢者の単身世帯の増加に伴い、群島外から介護のために帰省する親族なども増加することが考えられる」として県は、群島における定住促進を図る観点から介護帰省者の負担軽減を図ることが重要な課題と認識。総合調査報告書では「準住民の対象を拡大し、介護帰省者等を追加することを検討する」としている。

 農林水産物の輸送コスト支援事業の拡充でも沖縄に目を向ける。総合調査報告書では「世界自然遺産登録を契機とした奄美群島から沖縄本島への農林水産物の移出について、新たに補助対象とするなど沖縄との連携等の強化を図る必要がある」としている。県では沖縄との一層の連携を図るため、地元市町村の要望も踏まえながら輸送コスト支援事業の拡充に向けて国に要請していく方針。

 移住・定住の促進、教育・文化の振興に関する事業についても総合調査報告書は言及。「空き家の改修等による住居の確保など移住者を受け入れやすい環境づくりや、都市圏の企業等に勤務する専門人材がリモートワークなどにより活躍できる取り組みなど移住・定住に資する事業」「奄美群島の伝統文化、自然環境の体験活動や遠隔教育の推進など教育振興、シマ唄や八月踊りなど伝統文化の継承や全国に向けた情報発信といった文化の振興を図るため、教育・文化の振興に関する事業」も奄振交付金の対象とするよう求めている。