龍郷町復帰70周年記念講演

泉芳朗氏の功績を解説する楠田哲久さん(2日=龍郷町りゅうがく館)

「世界に類のない民族運動」
講師の楠田さん 泉芳朗氏の功績解説

 龍郷町のりゅうがく館は2日、特別講座として、奄美の日本復帰運動を率いた泉芳朗氏の功績を語る記念講演「奄美群島日本復帰70周年に学ぶ」を開いた。講師は泉氏に関する著書の作者で「泉芳朗先生を偲ぶ会」代表、楠田哲久さん(76)。30人が受講した。

 楠田さんは、背景に段々畑が写る戦後の名瀬小学校や、1945年に米軍の潜水艦が潜望鏡で撮ったとされる、龍郷町赤尾木の無線塔などのスライドを映し出し一つずつ解説していった。

 当時のNHKテレビジョン映画が「喜びにわく奄美群島」と題して放送したニュースも紹介。ダレス声明を受け53年12月24日に行われた議定書調印式のシーンや、県知事が船で奄美に入り泉氏(当時の名瀬市長)が出迎える場面などが流された。

 ニュースの中で泉氏は「8年の苦難。我々は本当の日本人になった。バンザイ」と高揚した声で語り、アナウンサーは「アメリカの軍政下に8年置かれた20万4千人が日本に復帰することになった」と読んでいた。

 楠田さんは「一滴の血を流すこともなく復帰を成し遂げた、世界に類のない大きな民族運動だった」と講演を締めくくった。

 聴講した同町大勝の50代の女性は「今まで関心は薄かったが、戦後の映像など興味深かった」と話した。

 同町秋名の森田啓子さん(73)は「自分なりに島の歴史を知ろうと図書館などに足を運んでいる。戦争の歴史と、現在奄美が置かれている(自衛隊配備などの)状況を子や孫に伝え、未来の在り方を考えなければならない」と語った。

 聴講者らは、同館2階の文化財展示室で開催中の企画展「日本復帰とこれからの龍郷」を観覧、同行した楠田さんに次々と質問を投げかけていた。