『琉球弧・海辺の生きもの図鑑』発刊

徳之島での地域おこし協力隊活動が縁で共著を発刊した鈴木さん(右)と西村さん(3日、徳之島町で)


『琉球弧・海辺の生き物図鑑~海辺で出会える465種』

鈴木・西村さん共著 徳之島地域おこし協力隊が縁
3町の教育委員会に寄贈

 【徳之島】鹿児島大学名誉教授・元徳之島町地域おこし協力隊の鈴木裕志さん(68)=鹿児島市=と、元水族館学芸員で伊仙町地域おこし協力隊の西村奈美子さん(56)=同町阿権=が共著『琉球弧・海辺の生きもの図鑑~海辺で出会える465種』(南方新社)を刊行した。二人は3日、徳之島3町の各教育委員会を訪ね、小中学校図書室用に計37冊を寄贈した。

 「海岸の植物から海藻、サンゴ・イソギンチャク、貝、エビ・カニ、ヒトデ・ウニ、魚、鳥までずらり勢ぞろい! ごくふつうに見られる海辺の生きものの面白さと不思議さを教えてくれる」。同島海岸の豊かな生物多様性を中心に、①楽しい海辺に潜む危険②海岸の植物③海藻・海草類④刺胞動物(サンゴ・イソギンチャク類)⑤軟体動物(貝・ウミウシ・タコ類)⑥甲殻十脚類(エビ・ヤドカリ・カニ類)⑦棘皮動物(ヒトデ・ウニ・ナマコ類)⑧魚類⑨鳥類―など項目で構成している。

 著者の鈴木さん(東京都出身)は甲殻類学や水圏生態学が専門で、元鹿児島大水産学部教授・同大付属図書館長。希少カニ類3種の奄美大島初記録など調査研究でもおなじみ。2019年4月~21年3月は徳之島町地域おこし協力隊として児童生徒や住民ら対象観察会の講師でも貢献した。

 西村さん(福岡市出身)は、長崎県西海国立公園水族館を経て、九十九島ビジターセンター学芸員。夫・千尋さん(元長崎県立大教授)の出生地伊仙町にU・Iターン。同町子育て支援課地域おこし協力隊や町文化財保護審議委員、私設運営の「阿権浜しぜん館」館長。海岸生物観察会の講師などにも積極的に協力している。

 共著のきっかけは約2年前、徳之島町金見(かなみ)海岸の「イノー(潮だまり)」であった観察会。鹿児島市と伊仙町。過去の調査資料の発掘や編集など連絡調整は大変だったが「互いのパートナーの理解と協力があればこそ実現できた」(鈴木さん)。図鑑の特長は「幼児からお年を召した方までが軽装備で歩いて観察できる生きものを紹介。児童生徒さん方にも足元の自然の素晴らしさを知って欲しい」(西村さん)。

 鈴木さんの妻啓子さんと3人で徳之島町(15冊)、天城町(10冊)、伊仙町(12冊)の順に訪問贈呈した。徳之島町の福宏人教育長は「子どもたちがこの図鑑を通して多様な海の自然を身近で観察。ふれあい、遊び、自分たちの島の自然環境や生物を知って欲しい。有効に活用します」とお礼を述べていた。

 問い合わせは図書出版・南方新社(鹿児島市、電話099・248・5455)など。