離島の条件不利性

県本土と結ばれている海上。国政によって外海離島の条件不利性を改善できるだろうか(名瀬港で)

部活遠征費の助成拡充、消費税軽減
県理解も実現は国政左右

 開会中の6月定例県議会では4日間にわたって行われた一般質問で、いずれも奄美市区の2議員が登壇した。取り上げた内容で印象的だったのは離島の条件不利性に関する質問。中高生の部活動では離島の場合、地区大会を勝ち抜き県大会に出場するには、会場となる県本土に移動する必要があり、奄美群島の最南端・与論島からなら約20時間も船に揺られて試合に臨まなければならない。遠征費の負担だけでなく、こうした心身への影響の配慮も求めた。消費税も離島の場合は、輸送コストによって二重の負担という事情を抱える。県は理解を示したものの、負担軽減には制度創設など国が壁となっている。

 一般質問を行ったのは、質問順で松山さおり議員、永井章義議員。松山議員が取り上げた離島の子どもたちの部活動遠征費は、答弁によると、県が指定する大会に参加する場合に遠征費の負担を軽減。「最も経済的」として生徒が利用する離島別の旅客航路運賃の2割相当額を中学生1回、高校生2回を上限に助成している。

 松山議員は助成対象が船舶のみとなっている点に切り込んだ。「台風による欠航で大会に参加できない生徒も出ている。これまでの努力が報われない事態を生んでいる。また、船舶は長時間の乗船を強いられることから、船だけでなく航空運賃も対象となるよう助成を拡充してほしい」と提案した。

 「離島における命題の一つ」として永井議員は、消費税の問題点に踏み込んだ。「海上輸送コストが多くかかることから、離島の物価は本土に比べ平均して10%高い。それにも関わらず本土同様、一律に消費税(10%)が課せられている。一律では同じ商品でも本土に比べて割高となっており、所得が低い離島住民にとって生活苦を生んでいる」として、ヨーロッパの離島の例を挙げて「離島地域を対象にした軽減税率をヨーロッパのように実施すべき。これが離島の振興につながる」と訴えた。

 両議員の意見。答弁で県当局も理解を示したが、部活動遠征費の制度拡充は国の支援の必要性を挙げた。「これまでも国に対し教育の機会均等の趣旨や離島における教育の特殊事情に鑑=かんが=み、離島教育の充実が図られるよう県開発促進協議会を通じて離島生徒が参加する文化・スポーツ大会への交通費及び宿泊費の助成制度の創設を要請している」(地頭所恵教育長)。

 離島における消費税の軽減も税制は国の制度であることから、実現できるかは国次第だ。塩田康一知事は答弁で「輸送コストで物価が高い中での消費税は、離島住民の負担が大きい。軽減を国に働き掛けていきたい」と述べた。国への要請は県開促協だけでなく、有人離島を有する全国27都道県で構成する離島振興対策協議会を通じても進められている。消費税負担軽減の検討を求める同協議会による要請は2021年から。当局は「引き続き粘り強く訴えていきたい」とした。

 国への働き掛けでは何が求められるのだろう。今年度末で期限を迎える奄振法の延長に向けて知事が繰り返し発言するのに「国会議員や県議会、地元市町村と一体となって、法延長の実現等を国に働き掛けていく」がある。奄振のように国政での“旗振り”がポイントではないか。となると国会議員の役割が大きい。

 離島の条件不利性の改善は、まだまだ解決しなければならない課題が横たわっていることが十分に届いているだろうか。衆参を問わず県選出の国会議員には離島を多く抱える鹿児島県全体の問題として認識してもらいたい。

 衆院選が近いからかもしれない。奄美群島が含まれる選挙区である2区に立候補が予想されている衆院議員の来島が相次いでいる。記録的な大雨による災害現場の視察では、その場で電話を用いて関係省庁に要請したり、公務ではなく政務として関係大臣の来島・視察を実現した議員もいた。「パイプの太さ」は本格的な復旧に向けて、国の予算の獲得という形で実を結ぶことを期待したい。

 議員による政治力は、地方自治体の要請・働き掛けでは及ばないような突破力・瞬発力を発揮することもある。鹿児島県選出だけでなく全国の離島選出の国会議員が結束して、暮らし続ける離島住民に国政から希望を届けるような政治力を見たい。

(徳島一蔵)