読本「命がけの密航」寄贈

自作の読本「命がけの密航」を加峯館長(左)に手渡す晨原教育長

奄美図書館に 大和村の晨原教育長自作
「困難乗り越えた先人の姿誇りに」

 戦後の米軍統治下の奄美で、生きるため、学問のため、日本復帰運動のために命懸けで密航した先人たちの歴史を多くの人に知ってもらおうと、大和村教育長の晨原=あさはら=弘久(65)さんが6日、自作の読本「奄美群島日本復帰70周年・島人が語り継ぐ アメリカ軍統治下の命がけの密航」を、奄美市名瀬の県立奄美図書館に寄贈した。晨原さんが同図書館に読本を寄贈するのは今回が3冊目。読本は、子どもから大人まで幅広く読んでもらおうと、イラストや資料写真などもふんだんに取り入れており、晨原さんは「奄美の歴史を知るきっかけになればうれしい。親子で手に取って、読んでもらいたい」と話している。

 読本はA4サイズ30ページ。家族が生きていくため黒砂糖の密貿易で密航船に乗り込んだ12歳の少女の話や、本土に進学、就職するために密航する若者、教科書を入手しようと本土に渡った教育関係者、日本復帰陳情のため群島民を代表して密航した青年らの逸話を、さまざまな文献や資料映像などを元に約半年かけてまとめた。

 文章は、子どもたちにも分かりやすい表現を多く使用。手書きのイラストや地図なども多く添えられており、元小学校教員の晨原さんの「子どもたちが楽しく学べる読み物にしたい」との思いが込められている。

 読本は同図書館のほか、大和村内の小中学校などにも配布した。晨原さんは「日本復帰の歴史は知っていても、当時の奄美の人たちの思いに触れる機会はあまりない。読本を通して困難を乗り越えた先人の姿を知り、誇りに思ってもらえれば」と話した。

 晨原さんはこれまでにも、「島人が成し遂げた無血革命 奄美群島日本復帰運動」、「島人が成し遂げた黒砂糖地獄の無血革命 黒砂糖勝手売買運動」の2冊の読本を自作し、同図書館に寄贈している。

 同図書館の加峯美由紀館長は「イラストなどを使って、子どもたちにも分かりやすい言葉で書かれている。今年は奄美群島日本復帰70周年の節目でもあり、多くの人に奄美の歴史を知ってもらえるよう活用していきたい」と話した。寄贈された読本は、奄美群島に関する資料を扱う郷土コーナーなどに展示され、貸し出しも行うことにしている。