文化庁長官表彰 増旭さん

文化庁長官表彰を受けた増旭さん(14日=奄美新聞で)

「音の根源は加計呂麻の自然」

 2022年12月、文化庁長官表彰を受けた音響空間プロデューサー、増旭(ます・あきら)さん(73)=瀬戸内町勝能(かちゆき)出身、東京都武蔵野市在住=が14日、奄美新聞を訪れた。加計呂麻島への帰郷は4年ぶり。「幼い頃聴いた島の自然の音が、今の仕事の基盤になっている」と思いの丈(たけ)を語った。

 増さんは1950年、加計呂麻島・勝能生まれ。押角小中学校(2015年に廃校)から奄美市名瀬の大島高校に進学、3年間寮生活を送った。卒業後、東京の電気・音響関係の専門学校に進学。シャンソンコンクールのアルバイトで、音楽の裏方の仕事を初めて経験し音響の道へ。

 「こういう仕事があることすら知らなかった。真っ白な状態から誘われるままに仕事に就いた」と増さん。

 やがて、都はるみさんや北島三郎さんのツアーにおいて、会場内の音響レベルを高める音響強化の仕事に携わる。北島さんからは、会場ごとに違う「音」を一定にする課題を突き付けられたという。86年にアメリカで新たな音の測定法が生まれると渡米、日本に戻り実験を繰り返し88年には測定方法を確立した。

 受賞は、会場ごとに異なってくる音を調整する「音響チューナー」(音の高さを確認するためのメーター)でのスピーカーシステムの確立が評価されたという。

 増さんは「会場の観客すべてを納得させる音を作るのが仕事。同時に、アーティストの個性を消してはいけない。データの分析はシステムで行うが、最後に音を決めるのは自分の感性」と語った。

 また、「人間は言葉を覚える時期に音を判別し、不要な音を(脳が)排除する。山の音、海の音、ダイナミックな自然の中で育ったからこそ今につながっている」と古里への思いを述べた。