街路樹として県道沿いに植栽されているソテツ。再び外来種カイガラムシによる葉などへの被害が出ている
外来種カイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS〈キャス〉)による奄美大島のソテツ被害は、緑化植物として植栽されている公有地では冬場にかけて被害葉の切除(切り落としての処分)や薬剤散布、健全葉も剪定=せんてい=などの対策が進められた。その後新芽が出て発育、順調に回復しているように見えたが、気温の上昇により再び寄生が表面化し、葉柄部や葉が白っぽくなったり、枯れたりする被害も出ている。
CASは「気温が高いと活動が活発になることが知られている」として県森林技術総合センターは、冬場や春~初夏のカイガラムシ防除方法をホームページなどで情報公開、被害葉の除去・焼却、株への薬剤防除徹底を呼び掛けた。具体的には▽新芽の展開前(冬芽の状態の時期)に浸透移行性の薬剤散布▽新芽が展開し、葉が固まった時期に、再度薬剤を散布―など。
県道などの道路沿いや公園、公民館、学校などの公有地では対策が進められ、幹だけの状態となったソテツがほとんどとなった。新芽が出て成長すると、淡い緑色から青々とした葉となり、健全な葉に戻ったと見られていたものの、今月に入り再び被害が報告されている。
県大島支庁林務水産課は「使用されている薬剤は完全に殺虫するものではなく、密度を減らすもの。薬の散布が遅れたり、1回のみで終わると再び葉に付着し枯れるなどの被害が出てしまう」と指摘する。完全には防除できていない中、同課は気温が上昇する夏から秋にかけて被害拡大を繰り返さないためにも薬剤散布など再度の対策の必要性を挙げており、公有地を管理する関係機関に情報提供、周知を図っている。「幹自体が枯れてしまうことを避けていきたい。そのためにも必要な情報を提供し、対策徹底への協力を呼び掛けている」(林務水産課)。公有地を管理する行政だけでなく、ソテツを植栽している民間も同様の対策が求められそうだ。
ソテツのCAS被害に関心を持ち、対策の必要性を訴え続けている内山大輔さん(46)は「このまま手をこまねいていては、年末などに行ってきた対策が無意味になってしまう。ソテツは島民として大事にしたい風景。また、食糧難の時に島民の命を救った作物であり、先人の思いに報いるためにもソテツへの感謝を込めて恩返ししなければならない。行政だけでなく多くの島民が再び被害が出ていることに関心を持ち、ソテツを守る取り組みを共に進めていきたい」と語り、早期対応を願っている。
なお、CASの害虫としての特性では①ソテツの個体全体(根を含む)に寄生②根への寄生では60㌢の土の深さに達する③卵は周囲温度約24・5度において8~12日で孵化=ふか=④野外では、16日で2齢、28日で3齢(終齢)に成長した個体もある⑤3齢となり、成熟した雌は100個を超える卵を産む―などが報告されている。